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 出勤者数を7割減に――。政府の掲げる高い目標に、千葉県内の大手企業では対応が進む。コロナ禍前から育児支援などでテレワークを進めてきたのが奏功したようだ。一方、中小企業では「業務の実態に合わず難しい」との声が多い。専門家は「プロの支援を受けてほしい」と呼びかける。

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 1月29日午前9時、松戸市にあるドラッグストア大手のマツモトキヨシホールディングス本社・人事部では、オンライン会議システム「Zoom(ズーム)」をつかった朝礼で一日が始まった。自宅から参加する社員がほとんど。

 「急ぎの資料作成をお願いしたいのですが、できそうですか?」「ひとりでは難しいので、分担して進めます」

 社のサーバーに保管された資料には自由にアクセスできるため、週の半分を在宅勤務で過ごす藤崎隆さん(43)は、自宅作業にも「不便はない」と話す。

 同社では育児支援などで在宅勤務を進めるため、コロナ禍前から徐々に設備を整えてきた。昨年4月の緊急事態宣言で、その動きが加速。本社の全社員がテレワークできるようにし、宣言下の出社人数を3割以下に抑えた。

 「育児支援でテレワークを推奨してきた土壌があり、一気に進められた」と広報担当者。藤崎さんは、東京都立川市の自宅から往復3時間かけていた通勤が無くなり、育児に割く時間が増えた。「仕事の質を保ちながら、ワーク・ライフ・バランスが実現できた」という。

 政府の掲げる出勤者数7割減を達成する大企業はほかにも。イオンリテール本社(千葉市美浜区)では、昨春の緊急事態宣言以降、在社率が常時3割以下になるよう、在宅勤務に加えて、土日出社や時差出勤を推奨。担当者は「働き方改革の一環として試験的にテレワークを行ってきたが、コロナで急速に進んだ」と話す。

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 一方、県内企業の99%を占める中小企業では、一度は実施したテレワークを取りやめた例も少なくない。

 自動車整備や福祉車両の販売を行う「エーゼットファクトリー」(千葉市若葉区)では、昨年の宣言時、ウェブ会議システムを導入。8人の社員を2班に分け、交代で出勤した。しかし、来店人数はいつも通りで仕事が回らず、取りやめに。小野田直社長(58)は「来客対応や整備作業はテレワークに不向き。とても無理」という。

 「設計はテレワーク向きだと思っていたが、ダメだった」。こう話すのは設計事務所「CMS」(千葉市若葉区)の細矢孝代表取締役(62)。昨春の宣言時に在宅勤務を取り入れ、出社人数を最大で7割減に。しかし、会社に置く資料を確認しないと進まない作業があり、意思疎通も難しい。作業効率は大きく落ちた。

 2度目の宣言時、社員からは「繁忙期の今は厳しい。頼むから出社させて」と悲鳴が上がった。細矢さんは時差出勤なども導入するが、「3割減が限界」。今は、自家用車出勤を推奨するなど、感染症対策の徹底に力を入れる。

 東京商工リサーチが2度目の宣言前後の1月5~14日に実施し、県内291社が回答したアンケートでは、テレワークをしている企業は29%にとどまった。一方、50%が「一度も実施なし」、21%が「実施後取りやめ」と回答。昨年11月の同様の調査では、実施していない企業にその理由を尋ねたところ、「業務がリモートワークに適していない」と回答した企業が9割に上った。

 日本テレワーク学会副会長で常葉大の小豆川裕子准教授は、「テレワークが効果を上げるには、ネット環境以外にも、ペーパーレス化や業務の見直し、制度やルール、意識の改革も必要だ。未整備のまま在宅勤務を進めると、かえって作業効率が落ちる可能性がある」と指摘。「専門家の支援を受けることも考えてみて」と提案する。

 テレワーク導入のため、県担当者は「まずは相談窓口を活用してみてほしい」と呼びかける。無料相談はテレワーク相談センター(0570・550・348。平日の午前9時~午後8時。3月31日まで)へ。(真田香菜子)

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