新型コロナウイルスに感染した患者が国内で初めて確認されてから1年。昨年2月末に唐突に全国一斉休校が要請されるなど、子どもたちの生活にも大きな影響を及ぼしている。昨年末に発表された「第1回短歌研究ジュニア賞」(短歌研究社主催)の入賞作品や受賞者の言葉から、コロナ禍のなか、子どもたちが過ごしてきた日々や思いをたどった。
棚霞(たながすみ)祖父母に成長見せに行く予定あっても消していく線(宮城県、高1、横溝麻志穂(ましほ))
昨年3月、仙台市内の中学校を卒業した横溝麻志穂さん(16)は、春休みに埼玉で暮らす祖父母を一家4人で訪ねる計画を立てていた。「大きくなったよ、と久しぶりに会えるのを楽しみにしていた」。だが、首都圏で新型コロナウイルスの感染が広がり、取りやめに。リビングの卓上カレンダーに書き込んだ予定を横線で消していく様子を、層をなして棚引く霞に重ねた。
棚霞を実際に見たのは、東日本大震災の翌年、家族で訪れた宮城・気仙沼の海だった。まだがれきが残り、建物はまばらだった。震災当時は幼稚園の年長で、自宅が半壊し、1週間ほど避難所で過ごした。入学を控えた時期の震災とコロナ禍。「棚霞は悲しい気持ちと結びついている」と横溝さんは言う。埼玉の祖父母とはいまも会えないままだ。
この歌は、短歌研究ジュニア賞高校生の部で銀賞を受賞した。横溝さんはこれまでも日々の思いを短歌や俳句や川柳に託し、朝日新聞の東北地方の県版「みちのく歌壇・俳壇・柳壇」にも掲載されてきた。
父母もなく在校生の歌もなく縮小されて卒業に泣く
(2020年4月11日掲載)
自粛期間中、外に遊びに行けず、友達にも会えないイライラした気持ちを詠んだのが次の川柳だ。
障子でも破りたくなる自粛かな(同5月16日)
高校の入学式はなく、登校が始まったのは6月に入ってからだった。
初めての革靴履いて靴擦れし…