第19回自分の100に近づけるか 元とーやま校長、受験を語る
コロナ禍の中、入試にのぞむ受験生たちに贈る激励のメッセージ「受験する君へ」。今回は「とーやま校長」ことお笑いトリオ「グランジ」の遠山大輔さんが贈る言葉です。
受験する君へ お笑いトリオ「グランジ」遠山大輔さん
「人生において何回か訪れる大勝負の一つ。ここでどれだけ『自分の100』に近づくことができたかを測る場所」。お笑いトリオ「グランジ」の遠山大輔さんは受験についてそう語ります。ラジオの中で開かれる「未来の鍵を握る学校」を掲げる番組「SCHOOL OF LOCK!」(以下、SOL)で「とーやま校長」として、昨年までパーソナリティーを10年間務め、リスナーの「生徒」の声を聴き続けてきました。高校卒業後に芸人をめざして上京した遠山さんは「テクニックじゃなくて気持ちのことしか言えないよ!」と断りつつ、受験生へのエールを送ってくれました。
10年間SOLの校長をしていたので、ニュースで「学生」や「10代」というワードが目や耳に入ってくると注目する体になってしまいました。今年の受験生はコロナでめちゃくちゃ大変ですよね。しかもセンター試験に代わる大学入学共通テストが始まった。1年前には記述式問題が出るとか英語の民間試験がどうとか言ってたのに、ぎりぎりになって「なしです!」ってなって。大会のルールがどんどん変わっていく中で集中力を保てっていうほうが至難の業。無理なのはわかっているけど、「今年はある程度できた人はみんなオッケー!」ってしたい気持ちです。
僕自身、昨年11月に新型コロナウイルスに感染し、10日間一歩も自宅から出ずに療養しました。人に迷惑を掛けてしまったというのと、復帰しても周りから「あいつは1回陽性になったやつ」とみられるのかなとか、そういうことを考え始めたら2、3日くらい気持ちが沈みました。
陽性になった人が「こういう毎日を過ごしてる」といったことを書いた体験談をツイッターで探して読んで、気持ちを少し落ち着かせようとしていました。知り合いが電話をくれたり、LINEでメッセージを送ってくれたりして、「人と話すだけでこんなに安心できるんだな」と思いましたね。頼んでないのにウーバーイーツの人が家に来て、玄関の前にドーナツの詰め合わせをどーんって置いていったこともあって。知り合いの方が手配してくれたと後で知りました。そういう粋なことをしてくれてうれしかったです。
劇場前をうろうろする日々
僕は生徒の9割が大学に進学する高校に通っていましたが、卒業したら東京に行って芸人になろうと決めていた。でも、学校の外で評価されたことがなかった僕は「俺より面白いやつがいる」という現実を突きつけられるのが怖かった。渋谷にあった吉本興業の劇場に履歴書を持って行こうとしたんですけど、劇場が近づくにつれて心臓の鼓動がめちゃくちゃ早くなって、劇場の前を3往復ぐらいした末に「今日は多分偉い社員さんいなさそうだから明日にしよう」といって引き返す、というのを本当に3カ月ぐらい続けちゃった。「応援してくれている地元の皆にこんなことがばれたらめちゃくちゃ恥ずかしい」と思い直して、心を無にした状態で劇場に行って履歴書を出したら「ここはもう閉館するので銀座にある劇場に行ってください」と言われたんです(笑)。
で、劇場出て銀座に向かっている間になんだか気持ちがとてもすっきりしたんです。びびってたけど案外こんなもんなんだ、っていう。「クラスの好きなあの子に告白したいけど、ビビってできない」みたいなのと近いですよね。SOLを聴いている子たちにも、そういった自分が10代の時に感じたことと共通するものがあるのかもと信じて、ラジオに向かっていました。あれ、こんな話でいいんでしたっけ?(笑)受験生にエールを送るとしたら、ですね。
受験の先は変えられる
人生において死ぬまでに確実に何回かはあるであろう大勝負の一つに、受験も確実に入ると思います。結果も大事ですけど、ここでどれだけ「自分の100」に近づくことができたかというのを測る場所だと思います。それができれば、次の大勝負の時はもっと近づけるし、「あのときこんだけやったんだから」と自信になる。不合格をもらう子たちもたくさん出ますけど、「自分の中では合格ラインを出しきれた」という子もいれば、「いや、やってなかったからそりゃ不合格だよな」となる子もいるだろうし。そうやって自分と向き合うためのものだと思います。
もちろん合格はしてほしいし、自分の行きたいところに行ってほしい。でも、ここで終わりでもなんでもない。テストの結果は変えることはできないけど、その先は毎日の過ごし方でいくらでも変えられる。「私は第3希望の学校に行くことになっちゃった」と落ち込んでいる子も、その後の過ごし方で「私の一番行きたかった学校はここだった」と変えていける。入ってからいくらでもその数字は「3」から「1」にできるんです。大人だって、会社や組織に入って不平不満はいっぱいある。僕もそうなったらめちゃめちゃ愚痴を言うでしょうし、そんなのばかりだけど、一方で「変えていけるよな」とも思う。「そこで何ができるか」の人生じゃないかな。なんて、かっこつけて言っちゃったりして。大学受験、1度も受けてないですけど(笑)。(構成・大野択生)
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