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 「前国防相が麻薬組織の親玉」から一転、「事件はでっち上げ」――。メキシコ前国防相が昨年、米国で逮捕された事件が波紋を広げ続けている。背景には、ロペスオブラドール政権と軍の関係も指摘される。(サンパウロ=岡田玄)

犯罪組織と当局がぐるになっている? メキシコの恐ろしい現状について、サンパウロ支局の岡田玄記者に聞きました。

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 「誰も犯罪を捏造(ねつぞう)することはできない。検察による決定を支持する」

 1月15日、ロペスオブラドール大統領は会見で、検察がサルバドル・シエンフエゴス前国防相を不起訴とした判断に賛同し、逮捕容疑そのものも「でっち上げ」との認識を示した。

 発端は昨年10月、米ロサンゼルスを訪れたシエンフエゴス氏が、米麻薬取締局(DEA)に身柄を拘束されたことだった。前政権の国防相として麻薬対策を指揮しながら、麻薬カルテルから賄賂を受け取ったなどとして起訴されたうえ、現地メディアはDEAが「エル・パドリーノ」(ゴッドファーザー)と呼ばれた麻薬組織の首領を追ったところ、シエンフエゴス氏だと判明したと報道。メキシコに衝撃が走った。

 ロペスオブラドール氏は逮捕直後から「事前に捜査を知らされていなかった」として、「主権が侵害された」と米国に抗議を始めた。米メディアによると、DEAとの協力を打ち切り、捜査員をメキシコから追放することも示唆したという。強い抗議を受け、米司法省は11月に起訴を取り下げ、シエンフエゴス氏はメキシコに送還された。

 当初はメキシコ側で捜査が続くはずで、エブラルド外相は「捜査しなければ、政治の自殺行為に近い」と語っていた。だが、米国から受け取った捜査資料の確認と、本人の協力を経て、シエンフエゴス氏は不起訴となった。ロペスオブラドール氏はその後も、「事件はでっち上げ」との主張を続けている。

連邦警察を解体、軍が新組織

 メキシコは武装した麻薬カルテルが「準軍事組織」になっているとも言われ、麻薬密売だけでなく、人身売買なども取り仕切る。カルデロン元政権(06~12年)が撲滅のために軍を投入して「麻薬戦争」を始めたことを機に、治安も急激に悪化した。政府統計では19年、3万6661人が殺害された。

 麻薬組織が捜査機関や政治家などと癒着し、捜査情報が漏れることもしばしばある。「エル・チャポ」と呼ばれた麻薬王、ホアキン・グスマン受刑者=米国で服役中=は2回にわたって拘束されながら、トンネルを掘るなどしてメキシコの刑務所から脱獄。刑務官や警察官が協力したとして逮捕されている。ガルシア・ルナ元公安相も、グスマン受刑者が率いたカルテルから賄賂を受け取ったとして、19年に米テキサス州で逮捕された。

 ただ、ルナ元公安相の逮捕を受…

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