難聴の娘亡くした悲しさ、裁判で上塗り 事故から3年

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多鹿ちなみ
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 大阪市生野区の交差点に重機が突っ込み、聴覚に障害のあった小学5年の井出安優香(あゆか)さん(当時11)が亡くなった事故から3年。両親は、「時間は止まったまま」と口をそろえている。娘を失った悲しみが癒えないまま、民事裁判でも新たな心の傷を負っている。

 事故は2018年2月1日。朝から小雨だった。下校中に信号待ちをしていた大阪府立生野聴覚支援学校の児童と教諭に、道路を工事していた重機「タイヤショベル」が至近距離から突っ込み、安優香さんを含む5人が巻き込まれた。

 安優香さんの突然の死は、家族に大きな傷を残した。父親の努さん(48)=同府豊中市=は、娘の補聴器をいつもシャツの胸ポケットに入れて持ち歩いている。うどんは食べられなくなった。お揚げやネギ、カマボコを入れて、よく料理してくれた娘の姿を思い出してしまうからだ。

 母のさつ美さん(49)は事故があった日と同じ薄暗い朝には自然と涙が出る。夕方に携帯電話が鳴ると、事故の連絡を思い出して、動悸(どうき)が激しくなることもある。

 安優香さんは生まれつきの難聴で、補聴器を身につけても大きな音しか聞くことができなかった。4歳のころから片道1時間の支援学校に通って、発音の方法を学んだ。

 小学部高学年では英語に興味を持ち、さつ美さんがふと「月曜日……」と口にすると「マンデー!」と言い返し、得意そうに笑っていた。事故の3カ月前にあった学校の学芸会ではセリフが一番多い役を任され、毎日リビングで練習する姿が頼もしかった。

 でも、楽しみにしていた広島への修学旅行も、卒業式も参加できなかった。

 重機を運転していた男性(38)は、事故をめぐる刑事裁判で懲役7年が確定。夫妻は昨年1月、男性と男性が働いていた建設会社に対して計約6千万円の損害賠償を求めて民事裁判を起こしている。

 裁判で争われているのは、安優香さんが将来得られたはずの収入である「逸失利益」。会社や男性側は、健聴者と比べて思考力や学力が劣り就職も難しいために収入は一般女性の40%になると主張し、健聴者と同じだとする夫妻と対立する。努さんは「安優香が亡くなってつらいのに、さらに傷口を掘り下げられる思いだ」と感じている。

 夫妻も障害のある人が自由に…

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