新型コロナワクチン「有効性と副作用」のリアルな数字

酒井健司
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 新型コロナワクチン臨床試験は、ワクチンを接種する群と接種しない群(対照群)をランダムに分けて行われました。ランダム化比較試験といってバイアスが少なく信頼性の高い方法です。しかしランダム化比較試験にも弱点があって、臨床試験に参加できないような人にもワクチンが有効であるかどうかは保証されません。

 臨床試験に参加するには一定の基準をクリアする必要があります。たとえばファイザー製のワクチン臨床試験は16歳から85歳までの健康な人が対象でした。86歳以上の人や臨床試験に参加できないような持病を持った人にもワクチンが有効かどうかは推測するしかありません。

 そこで大事になってくるのが実際の臨床の現場、「リアルワールド」のデータです。海外ではすでに新型コロナワクチンの接種が開始されており、とくにイスラエル(人口約900万人)はワクチン接種率で世界でも先頭に立っていて、2月上旬時点ですでに500万回のワクチン接種が行われています

 まだ査読されていない予備的なデータですが、イスラエルでファイザー製のワクチン接種を受けた60歳以上の約20万人と、同じ年齢層の未接種者約20万人を比較したところ、ワクチン接種後14日目に新型コロナウイルスが検査で陽性になる可能性が33%低く、リアルワールドでもワクチンの有効性が示されました。別の方法によるリアルワールドデータの検証では1回接種で約50%の減少を示しています。

 なお、臨床試験では1回接種で50%ほどの発症予防効果を示しました。一般的に、臨床試験と比べてリアルワールドでは臨床試験より薬やワクチンの有効性が落ちる傾向がありますが、ファイザー製のワクチンについてはリアルワールドで著しく有効性が落ちるようなことはなさそうです。臨床試験では2回接種で95%の発症予防効果を示しましたが、そのうちに2回接種後のリアルワールドデータも出てくるでしょう。

 副作用についてもリアルワールドのデータが出てきました。ノルウェーワクチン接種後に高齢者が30人以上亡くなったと報道されました。報道によれば死亡した方はすべて基礎疾患を持っていたとのことです。臨床試験ではワクチン群での死亡者の増加は認めていませんが、臨床試験に参加できないような虚弱な高齢者はワクチン接種によって死亡のリスクが増える可能性は否定できません。

 ただ、虚弱な高齢者はワクチン接種とは無関係に亡くなります。ノルウェーでは通常でもケア施設の入所者から週に400人程度の死亡者が出ています。現時点において、ワクチン接種後の死亡の報告は虚弱な高齢者に予想される死亡率や死因と一致しており、ワクチンによる死亡の増加は確認できないとWHOは結論しています。とは言え、「死亡の増加は確認できない」だけで「死亡の増加がないことを確認した」わけではないので、これからもリアルワールドでの副作用情報は監視が続けられます。

 今月から日本でも新型コロナワクチン接種がはじまります。他の先進国よりも遅れたのは残念ですが、一方で他の国のリアルワールドデータを見て方針を修正できるというメリットもあります。また、臨床試験では民族によって効果や安全性の差はありませんでしたが、リアルワールドでの日本人のデータはどうなのかという検証も必要でしょう。これからもリアルワールドデータに注目していきます。

※参考:Are COVID vaccination programmes working? Scientists seek first clues(https://www.nature.com/articles/d41586-021-00140-w別ウインドウで開きます

The effectiveness of the first dose of BNT162b2 vaccine in reducing SARS-CoV-2 infection 13-24 days after immunization: real-world evidence(https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2021.01.27.21250612v1別ウインドウで開きます

GACVS COVID-19 Vaccine Safety subcommittee meeting to review reports of deaths of very frail elderly individuals vaccinated with Pfizer BioNTech COVID-19 vaccine, BNT162b2(https://www.who.int/news/item/22-01-2021-gacvs-review-deaths-pfizer-biontech-covid-19-vaccine-bnt162b2別ウインドウで開きます(酒井健司)

酒井健司

酒井健司(さかい・けんじ)内科医

1971年、福岡県生まれ。1996年九州大学医学部卒。九州大学第一内科入局。福岡市内の一般病院に内科医として勤務。趣味は読書と釣り。医療は奥が深いです。教科書や医学雑誌には、ちょっとした患者さんの疑問や不満などは書いていません。どうか教えてください。みなさんと一緒に考えるのが、このコラムの狙いです。