セクハラ、相談したら逆に…被害者が苦しむ「二次被害」

高橋末菜 藤崎麻里
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 セクシュアルハラスメントの被害がいまも後を絶たない。上司や勤め先に相談してもきちんと対応してもらえず、逆に被害者が責められるといった「二次被害」を訴える人もいる。働き手を守るルールがうまく機能しておらず、法整備にも課題がある。

 東京都品川区の教育委員会で嘱託職員として働いていた女性が4日、区に約354万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。同僚らからセクハラを受けたのに区の対応が適切ではなく、ストレス性障害を発症し、退職を余儀なくされたと主張している。

 訴状などによると、女性は20代だった2017年4月、品川区教委に就職し、相談業務を担当していた。5月以降、同じ職場の同僚から複数回にわたりホテルで、性行為をされたという。女性は同僚について「指示を仰ぐなど上司のような存在で、拒否すれば仕事ができなくなるという恐怖感があった」と話す。

 ほかの同僚からも、飲み会でひわいな言動をされた。職場の忘年会後にキスされたり、体を触られたりもしたという。

 女性は18年6月に上司に報告したが、意に反して加害者に内容を漏らされたと主張している。同僚の懲戒処分を区の相談窓口へ求めたところ、報告した上司から「そんなことをしたら彼が免職になるかもしれない」と言われたという。

 同僚の異動などを上司や人事に求めていたが、いっしょに働く状況が続き、同年10月に休職した。女性は契約更新できず、退職に追い込まれたとしている。

 原告側は、セクハラ防止についての研修や相談窓口の周知がされておらず、被害相談後の対応も不適切だったとしている。女性は「被害を訴えたことで働く環境は良くなるどころか悪くなった。こんな二次被害を受けるなら、声を上げられない」と話す。

 品川区は取材に、個別事案については答えられないとした上で、「相談があればきちんと対応している。訴状が届いたら対応したい」とした。セクハラの防止策については、職員向けホームページに相談窓口の情報を載せており、研修でも扱っているとしている。(高橋末菜)

企業名が公表されるルールあるが…

 厚生労働省は被害者は一人で悩まず、会社の窓口や信頼できる上司に相談するよう呼びかけている。だが、適切な対応が受けられないこともある。

 男女雇用機会均等法では事業主に、「相談窓口の設置」や「相談に対する適切な対応」など10項目の措置を指針で義務づけている。二次被害を防ぐため、「プライバシー保護のための措置の実施と周知」などもしなければいけない。

 民間事業者ができていない場合には労働局が指導や勧告をする。従わない場合は企業名が公表される。

 ただ、こうしたルールは十分機能しているとは言えない。10項目の措置を守れていない企業は多く、二次被害で苦しんでいる人もいる。それなのに、これまでに企業名が公表された事例はないという。

 地方自治体については公表の仕組みの対象外だ。公務員は被害を受けても、公的な紛争解決の仕組みを原則として利用できない。労働政策研究・研修機構の内藤忍・副主任研究員は「公務員の場合は、監督官庁による指導を期待する立て付けになっている」と話す。

 そもそも現状では、企業などにセクハラを防ぐよう義務づけるルールはあっても、行為自体を禁じる法律はない。内藤氏は「個人の救済に焦点が当たっていない」と指摘する。藤崎麻里

事業者に義務づけられている主な項目

セクハラはあってはならない旨の方針の明確化

○厳正な対処の方針と内容の規定化

○相談窓口の設置

○相談に対する適切な対応

○事実関係を迅速かつ正確に確認

○被害者に対する適正な配慮

○行為者に対する適正な措置

○再発防止措置

○プライバシー保護の措置と周知

○相談などを理由に不利益な取り扱いをしない旨の規定化