一人暮らし高齢者と高校生が電話で交流 安否確認にも

上田学
[PR]

 コロナ禍で自宅に閉じこもりがちな一人暮らしのお年寄りに、高校生が電話や手紙で連絡して孤立を防ぐ取り組みが、静岡県内で進んでいる。高齢者の安否確認の役割に加え、スマホ世代の高校生がお年寄りと言葉を交わして社会経験を積むのにも役立っている。

 「お元気ですか」。昨年11月下旬の放課後、県立裾野高校1年の新美秀貴さん(16)が、裾野市内に住む山口正巳さん(77)に電話を掛けた。卓球部の活動を報告し、週末に控えた試合を話題にすると、「全力を出せるよう頑張ってね」と励まされた。「本当の息子のように接してくれる。見守られている感じがする」と新美さんは言う。

 新美さんは7月下旬に初めて山口さんに電話した。顔もわからない相手で、緊張して手が震えた。だが、「明るく話しかけてくれて一気に打ち解けた。進路や将来の夢についても助言してくれてうれしい」と、今は心の支えにしている。

 山口さんは「最初はぎこちなかったけど、徐々に気軽に話してくれるようになった」と振り返る。「外出自粛時はしゃべる相手が近くにおらず、声が出なくなったほど。若者と話すようになって元気になった」

 この取り組みは、同校の生徒有志が「『声のチカラ』プロジェクト」として昨年5月に始めた。市内で一人暮らしをする75歳以上を対象に、週に1回5分間の電話や、月1回の手紙で近況を伝え合う。会話を楽しんでもらいながら、体調や生活の様子を確かめ、安否確認につなげる。

 思いついたのは、当時生徒会長だった3年の山形千尋さん(18)だ。同居する祖父が春先に体調を崩して救急搬送され、半年間入院した。「身近な家族でも体調の変化に早く気付けず、悔しかった。一人暮らしだったら、もっと深刻な事態になるんじゃないか」と考え、市社会福祉協議会に相談したところ、協力してくれることになった。

 市社協によると、コロナ禍で外出を控える高齢者が目立ち、民生委員らの見守り活動や行事もやりにくくなった。そこで対象となる約400人に参加を呼びかけると、21人が応じた。

 一方、高校では生徒会役員を中心に11人で有志団体「Ring(リング)」を立ち上げた。普段は電話をあまり使わないという2年の横山大河さん(17)は「顔を合わせないので、かえってお互いに素直に話せる」。相手の安藤信子さん(79)は「自分の孫と話しているような感じ」。10月の体育祭には応援に出向いて横山さんと初めて会い、「元気をもらっている」という。

 同校の稲有子教諭(45)は「今の高校生はSNSでやりとりし、電話や手紙の習慣がない。自分を自らの言葉で語れるようになり、自信をつけている」と手応えを語る。

 大正大学地域創生学部の浦崎太郎教授(教育学)は「高校生は地域との接点が少なく、コロナ禍でその距離はより遠ざかった。普段から若者の思いに関心を寄せることが地域の担い手育成につながる」と話す。(上田学)