新型コロナウイルス感染拡大の「第3波」は抑え込めるのか。国内初の院内感染を経験し、積極的なPCR検査で1波、2波を食い止めてきた和歌山県で、1年間、現場を指揮する野尻孝子・福祉保健部技監に対策や経験の蓄積を聞いた。「疫学調査への協力がキー(カギ)で、聞き出せる保健所の体制が重要だ」と指摘する。
「和歌山方式」でPCR広げる
和歌山県では昨年2月、湯浅町の済生会有田病院で複数の医師が肺炎を発症したことを端緒に、国内初の院内感染が判明した。県は症状の有無にかかわらず病院の職員や患者ら約470人にPCR検査をし、市中への感染拡大を封じ込めた。当時は大阪府に検査の支援を頼んだが、その後、県内で検査をまかなえるように、新しいPCR機器を導入した。
これ以降、県は濃厚接触者を国の基準を超え広めにとらえてPCR検査をする「和歌山方式」で感染拡大を抑え、昨年春ごろの第1波、同夏ごろの2波では、散発的なクラスター(感染者集団)は発生したものの、1日の感染者は10人未満の日がほとんどだった。「発症2日前からという国の基準はあるが、例えば飲食やカラオケのような密な状況であれば、3日前の接触者でも検査する」と話す。
一方、昨年11月以降の第3波では、県内でも1日の感染者数が10人以上となる日が多く、過去最多をたびたび更新するなど感染拡大が続く。年末年始の人の集まりが影響していると分析するとともに、保健所の調査で感染者を掘り起こしているとも説明。「濃厚接触者で陽性と判明する人が多く、調査でキャッチできていることに大きな意味がある」と話す。
和歌山県内では、感染者のうち経路不明の割合は12月で19・5%と、大阪府の51・7%を下回る。日々集まる報告から、検査対象の範囲が狭いと感じれば、保健所長に直接、対象を広くとるよう指示し、人員の応援を出すこともあるという。
■検査の要は保健所…