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 福島県双葉町の国道に「復興」を「Re-Start(再出発)」と英訳した案内標識が立っている。東京電力福島第一原発事故で、いまだ全ての住民の避難が続く町だ。英訳には町職員たちの思いが込められている。

 除染廃棄物を運ぶ大型ダンプや工事関係者の車が行き交う町中心部の国道6号。青い案内標識に白い文字で「中野復興拠点」、その下には「Nakano Re-Start Base」の英語表記。

 一般的に「復興」は「reconstruction(再建)」と訳され、政府の復興の司令塔、復興庁も「Reconstruction Agency」と表記される。なぜ、案内標識は「Re-Start」なのか。

 町復興推進課に尋ねると、主幹の田中聖也さん(29)は「やっと気づいてもらえましたか。標識は1年前にできて、聞かれたのは初めてです」と明るい声で答えた。

 町では昨年3月、面積の4・6%で原発事故による避難指示が初めて解除された。国の避難指示が出た11市町村のうちで最も遅く、インフラが整わず、人が住めるのは来春の予定だ。そんな中、町は地場企業など27社(予定含む)が進出する「中野復興拠点」(約50ヘクタール)を新たな町づくり拠点と位置づける。津波で被害を受けた沿岸部に整備された。

 国道の案内標識は昨年2月に設置。事前に道路を管理する国土交通省から復興拠点の表記について町に相談があり、課内で話し合った。「reconstruction」は「長くて難しい」と見送った。それよりも、町づくりがここから始まる「再出発」との意見が出て、国交省も受け入れたという。

 田中さんは「他の市町村の復興が進む中、双葉町はまだ1人も帰還できていない。ごく一部ですが避難指示が解除され、単に元に戻す『再建』より、やっとスタートラインに立てた、という思いを込めました」と話す。震災からまもなく10年。町の復興は動き始めたばかりだ。(小手川太朗)