負担増でも命守るため増床 鈴木・藤沢湘南台病院総院長

新型コロナウイルス

取材・構成 秦忠弘
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 【神奈川】新型コロナウイルス感染者の急増に対処するため、先月末、コロナ患者用の病床を6床から14床に拡充しました。大規模病院とはいえない当院には、コロナのような感染症を専門とする医師は残念ながらいません。コロナ患者に対応するには、より人手が必要で、医師や看護師の負担も増えます。経営的にも大きな打撃になります。それでも病床拡充に踏み切った理由をお話しします。

 当院は、藤沢市北部にある病床数330床、医師や看護師など職員約700人の地域の中核を担う民間病院です。コロナ医療に関しては、県が打ち出した「神奈川モデル」の枠組みのなかで、おもに中等症患者を受け入れる「重点医療機関」で回復して陰性となった患者や、疑似症患者などを受け入れる「重点医療機関協力病院」に指定されています。

 当院を含め民間病院は、地域医療の中で自分の立ち位置を決めて、他の病院とも競争しながら、赤字を出さないように皆保険制度の中で運営しています。

 ですが、感染の第1波ではコロナの実態がわからず、外来などの患者さんが減りました。協力病院としてコロナの患者に対応してきましたが、すでに数億円の赤字が出ています。

 コロナ病床を増やすにあたっては、感染防止に万全を期すため、メインの病棟から離れた緩和ケア病棟をコロナ専用としました。10の個室と2人ずつで使用する2部屋です。

 診療にあたるのは、副院長を統括リーダーとした内科、循環器科、消化器科、外科、救急科などの医師たちです。看護師は、これまで緩和ケア病棟に入院していた患者さんも継続して診なければいけないし、新しいコロナ患者さんを診るためには看護師を増員しなければならない。本人の希望もあるし、手当も別につけないといけない。病床を増やすと、病院にとっては負担が増えます。

 それでも病床拡充に踏み切るきっかけとなったのは、1月の感染者の尋常ではない増え方でした。当院の発熱外来でも診る人、診る人、みんな陽性といった感じで、陽性率は3割ぐらいあったと思います。

 病院にかからないで、救急搬送中とか、自宅療養中に亡くなる人が出てきているという報道が相次ぎました。こういう状況はまずい。人の命を守る医療にとって由々しき事態だと感じ、拡充を決断しました。医師、看護師、事務職員も拡充を支持してくれました。地域に育てられてきた民間病院としては、つぶれてもいいとは言いません。今ここで頑張らなくては、という覚悟です。

 もちろん、当院の設備ではコロナの重症患者や中等症の患者を本格的に診ることはできません。人工呼吸器は8台ありますが、エクモ(ECMO=体外式膜型人工肺)はありません。

 また、変異株が入ってきて感染者が増加することも心配しています。

 今回、感染症法が改正されて民間病院にコロナ患者用病床の確保を要請、勧告することができるようになりましたが、それなりの補償とセットでなければならないと思います。医師や看護師は精神的負担が重なり、厳しい状況です。万が一の場合は、休職させて回復を待つとか、いろいろな対策をとっています。ただ、民間病院には感染症の専門家がいない場合が多く、多忙で専門的な勉強の時間をとることも難しい。看護師も同じです。そういう準備のために国は何も支援してきていない。

 それなのに、公立病院とは歴史も立ち位置も異なる民間病院に対して、一律に勧告するのはおかしいのではないか。いざという時のために、ふだんから行政が民間病院に支援をするべきです。コロナだけでなく、次なる新たな感染症に備えるためにも、ぜひ考えてもらいたいですね。

 これからワクチン接種が始まります。接種にあたっては、医療従事者や接種場所の確保の問題など、民間病院を含む「ワンチーム」の連携が大切だと思っています。(取材・構成 秦忠弘)

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 すずき・しんいちろう 神奈川県藤沢市生まれ。横浜市立大学医学部卒。祖父が1932年に創設した藤沢湘南台病院(藤沢市高倉)の院長に95年に就任。2015年に総院長に就任。今も同病院で手術及び外来診療などを担当している。63歳

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