カジノ化した市場 勝者はだれ? 全米揺さぶる投機騒動

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ニューヨーク支局・江渕崇
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経世彩民 江渕崇の目

 か弱き民草が手を取り合って巨悪に挑む物語は、いつの世も人々を引きつける。個人投資家らがSNSで結託し、赤字続きのテレビゲーム販売店の株を買いまくった騒動がアメリカを揺さぶっている。株価はいったん20倍以上につり上がり、「空売り」で株価下落に賭けていたヘッジファンドに数千億円の大損を負わせた。これは世直しを求める「新たなウォール街占拠運動」なのか、それとも、コロナバブルに咲いたあだ花に過ぎないのか。

拡大する写真・図版個人投資家による投機の対象になった米ゲーム販売店ゲームストップの店舗=2021年1月、米ニューヨーク・ハーレム地区、江渕崇撮影

 「母さんに今、小切手を書くことができました。これで姉(妹)にライム病の治療を受けさせられる。大変な年だったけど、みんなに感謝しています」

 個人投資家たちが群がったゲームストップ社株の価格がピークに達しつつあったころ、「スタムボム」を名乗る人物がネット掲示板レディットにそう投稿した。今回の「反乱劇」の「根城」となった空間だ。投資残高は6万4153ドル(約680万円)にのぼり、約5万ドルのもうけがあったことを、添えられたスクリーンショットが示していた。

 連絡を取ってみると、スタムボム氏は丁寧な返事をくれた。「ウォール街は市場を占有し(リーマン・ショック時の)2008年から相場を操ってきたんです。ロックダウンで人々は挑戦の機会を得て、投資に魅せられ、人生を変える本物のお金を手にした。強欲なウォール街を震え上がらせることができた」

 巣ごもりの倦怠(けんたい)、なお広がる格差への義憤、政府から送られてきた生活支援の小切手と射幸心。そんなものが、ない交ぜとなった投機劇は、選ばれしプロが富裕層のお金を運用するファンドから、無数の個人へと富を「再分配」してみせた。

拡大する写真・図版ネット掲示板レディット上の投資コミュニティー「ウォールストリート・ベッツ」の画面。登録者は870万人にのぼる

 反乱兵の武器は手数料無料の投資アプリ「ロビンフッド」。悪代官から金品をせしめて貧民に配る、英国伝説のあの義賊にちなんだ名だ。これで終幕なら、なんとも出来過ぎた話である。

 しかし、これは明白なバブル…

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