第3回役所前に鋭い目つきの「巨人」 名前の秘密、山で探った
「ウルトラマン」や「エヴァンゲリオン」の映画、完結が近いマンガ「進撃の巨人」など、今年は大きな人間「巨人」がモチーフのSFやファンタジーが目白押しです。
ところで、人はなぜ、巨人の物語が好きなのでしょうか。神話の時代から活躍し、現在も巨人がつくったと言われる山や池が各地にあります。巨人はどんなときに現れたのか。今もどこかに巨人はいるのか。「巨人のあしあと」が残る土地を訪ね、考えました。
長崎県の島原半島には、味噌(みそ)を爆食いする巨人がいたと伝わる。
名を「みそ五郎」という。高さ約4メートル、強化プラスチック製の像が、南島原市役所にある。赤いふんどし一丁、「考える人」のポーズで、倉庫の上に腰掛けている。遠目に見ると「ゆるキャラ」。だが近づいて見ると、おだやかでない目つきをしている。
数年前、この像が群衆にもまれる写真を新聞で見た。まわりにいた人は、興奮した様子で、みそ五郎に手を伸ばしていた。
みそ五郎とは、何者なのか。
詳しい人を紹介してもらえないかと、南島原市役所にお願いした。すると「みそ五郎倶楽部」なる組織を教えてもらった。創設者の一人、嶋田惣二郎(そうじろう)さん(70)は、地元の長老から、口承で伝わってきたみそ五郎の民話を聞き取り、まとめた。こんな話だ。
〈昔むかし、山に大きな男が住んでいた。この大男、人が良く、力持ちで、誰からも好かれた。味噌が大好きで、「みそ五郎やん」と呼ばれた。畑仕事をしたり、山を切り開いたりして、百姓から味噌を分けてもらっていた〉
味噌は1日に4斗もなめたと伝わる。4斗は約72リットル。味噌汁なら1万杯くらいつくることができる量だ。
嶋田さんらがつくった「みそ五郎倶楽部」とは、1980年代にできた町おこし団体だ。みそ五郎を町のシンボルにしようと、商店街のまつりの名前を「みそ五郎まつり」に変え、有志で発泡スチロールの像をつくった。石像や銅像もつくられ、地元企業の建物には、みそ五郎の絵が描かれた。酒やそうめん、まんじゅうなど、みそ五郎の名前がついた商品も生み出された。
おおむね住民の味方だった
地元で愛される存在だが、その正体は何なのか。「みそ五郎」という名前に、秘密があった。
モデルは諸説ある「みそ五郎」。その伝説に迫っていきます。
嶋田さんの調べでは、島原半…