第1回巨人は人類の敵か味方か 手がかりはカズオ・イシグロに

有料記事

真野啓太
[PR]

 「ウルトラマン」や「エヴァンゲリオン」の映画、完結が近いマンガ「進撃の巨人」など、今年は大きな人間「巨人」がモチーフのSFやファンタジーが目白押しです。

 ところで、人はなぜ、巨人の物語が好きなのでしょうか。神話の時代から活躍し、現在も巨人がつくったと言われる山や池が各地にあります。巨人はどんなときに現れたのか。今もどこかに巨人はいるのか。「巨人のあしあと」が残る土地を訪ねます。

     ◇

 人類にとって巨人は敵か味方か。1千年以上も昔の「分断」を背負った巨人の祭りを訪ねると、そんな疑問が浮かびました。加賀の一向一揆やカズオ・イシグロの小説を手がかりに、考えました。

 新政府に反旗をひるがえした西郷隆盛は「西郷(せご)どん」の愛称を持つ。「どん」は「殿」のこと。尊敬だけでなく、親しみのニュアンスが出る。

 九州南部で愛される「どん」は、西郷だけではない。本稿で紹介する巨人「弥五郎どん」は、鹿児島・宮崎の三つの神社の秋祭りに登場する大きな人形だ。その一つ、岩川八幡神社鹿児島県曽於市)の祭りを訪ねた。

 岩川の弥五郎どんは身長4・85メートルで、武者のような姿をしている。茶色の着物に、大小の刀を帯び、矛をささげ持っている。恒例の「弥五郎どん祭り」では、人形は四輪車に乗せられ、子どもたちが街中を引いてまわる。新型コロナウイルスが流行した昨秋も、規模を縮小して祭りは開かれた。

 太い眉毛をつり上げたこわもてだが、地元では守り神として慕われている。弥五郎どん保存会の中迫勇会長(86)は「コロナも弥五郎どんが吹き飛ばしてくれるでしょう」と語った。

英国の民話や伝説では「巨人は退治される存在」。一方の日本では「救世主のような存在」。人類の分断と、巨人の関わりを考えます。

 弥五郎どん祭りのルーツは1…

この記事は有料記事です。残り1834文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【10/25まで】すべての有料記事が読み放題!秋トクキャンペーン実施中!詳しくはこちら