アフガニスタン東部で2019年にNGO「ペシャワール会」現地代表の中村哲医師(当時73)が殺害された事件で、アフガン捜査当局がイスラム武装勢力「パキスタン・タリバーン運動(TTP)」の地方幹部でパキスタン人の男を主犯格と特定したことが、複数の捜査関係者への取材でわかった。TTPの報道担当者によると、男は1月末に死亡した可能性が高いという。男は生前、「(中村さんを)誘拐するつもりだったが、(共犯者が)殺してしまった」と周囲に話していたという。
中村さんは19年12月4日朝、車に乗っていたところを武装集団に道をふさがれ、銃撃を受けて死亡。同行していた運転手1人、警備員4人も死亡した。
捜査当局は事件現場の防犯カメラの映像の解析などから容疑者1人を特定し、逮捕した。容疑者は調べに事件への関与を認め、「武装勢力幹部が事件を首謀した。自分は運転手として雇われた」と供述した。
捜査関係者や知人によると、TTP地方幹部の男はパキスタン北西部出身。年齢は中年で、誘拐による身代金を資金源としていたとされる。
政府幹部によると昨年6月、捜査線上に浮かんだTTP地方幹部の男が潜伏する東部クナール州の隠れ家を捜査当局が急襲したが、銃撃戦になり、その合間に取り逃がした。
その後、男は逃亡したが、今年1月29日、仲間と首都カブールで襲撃事件を起こし、現場で警備員に撃たれて死亡。逃げ帰った仲間が男の家族やTTPに死亡を知らせた。TTP報道担当者らが朝日新聞通信員の取材に明かした。
また、男が懇意にしていたTTPのメンバー2人によると、男は生前に悩んだ様子で「共犯者が(中村さんを)撃ってしまった」と話していたという。
この共犯者はアフガニスタンから出国し、現在はパキスタン北西部に潜伏しているとの情報がある。事件は、ガニ大統領が監督する最重要事件に指定され、捜査当局が関係先の捜索を進めている。捜査幹部は「残る共犯者を特定し、動機の解明につなげたい」と語る。(バンコク=乗京真知)
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