出水市と錦江町が災害時「敵に塩を送る協定」その心は?

城戸康秀
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 【鹿児島】敵であっても災害時には助け合う――。3年前に互いの魅力を競い合う「敵対都市」を宣言して連携を深める出水市と錦江町が、災害時の相互応援協定を結んだ。武田信玄上杉謙信の故事にならって別名を「敵に塩を送る協定」としたが、今回は話題づくりではなく、自然災害の激甚化と被害の広域化に対する強い危機感が背景にある。

 熊本県に接する県北端にある出水市と、大隅半島の南端に近い錦江町は直線距離で約103キロ、車で一般道を走れば片道3時間半かかる。大きな地震や台風・豪雨などで同時に大きな被害に見舞われる可能性が低い「遠い関係」が、今回の相互協定に結びついた。

 当初は両市町のほぼ中間にある鹿児島県防災センター姶良市)で調印式を開く予定だったが、コロナ禍と鳥インフルエンザに配慮して中止。1月26日付で締結された協定では、被災時の応援内容として、復旧活動に必要な資材・物資、被災者への食料や飲料水、生活必需品の提供のほか、被災者の一時受け入れ、職員の派遣などを挙げている。

 こうした相互応援協定は2007年に県と県内全市町村が締結。出水市はその前年に薩摩川内市阿久根市熊本県水俣市など近隣自治体と協定を結んでいる。

 昨年7月の熊本県南部豪雨では、人吉・球磨地方の自治体が軒並み被災するなど想定を超える自然災害が発生。錦江町の木場一昭町長は翌月、防災担当者を出水市に派遣し、相互応援協定を提案した。

 両市町はご当地アイドルがライバルとして競う連携企画が発展する形で、18年6月に友好都市ではなく敵対都市を宣言。「対決」をキーワードに双方のイベントに参加して地元をPRするなどお互いを盛り上げてきた。木場町長と出水市の椎木伸一市長がマラソンで健脚を競うなどトップ同士の交流も深まり、提案を受けた椎木市長が二つ返事で快諾したという。

 木場町長は「被災した時、互いに『いつでも行きます』という関係を築いておけば助けを頼みやすくなる」と強調。自然災害だけでなく、町内で鳥インフルエンザが発生した場合に養鶏の盛んな出水市にアドバイスをもらうことも期待しているという。

 椎木市長は「県境をはさんで発生した熊本県南部豪雨では広域被災の怖さを痛感した」と語り、遠く離れた錦江町との連携を歓迎する。「地域の活性化を目指した敵対宣言が、住民の安全・安心にかかわる危機管理での連携に発展した。全力で戦っていても、どちらかが傷ついたら手を差し伸べるのがライバルの神髄」と語り、今後も「本当は仲のいい敵対関係」の絆を深めたい考えだ。(城戸康秀)