いつもにこにこしていた妹が、表情を失った。かと思えば、刃物やお皿を投げつけてきた。
幻覚であらわれた「敵」と戦っているらしいと分かったのは、10歳の頃に、妹が統合失調症との診断を受けてからだ。
五つ年上の姉、三間瞳さん(37)は、当時高校生だった。現実を受け止めきれず、妹が発症に至った「犯人」を捜した。
妹に理解のなかった担任。勉強になじめなかった妹に、「お前は頑張らなくていい」と言った祖父……。
だが、誰かを責めても現実は変わらなかった。
統合失調症は、およそ100人に1人が発症するとされる。原因ははっきりしておらず幻覚や意欲の低下、判断力の衰えなどの症状がある。症状をコントロールして日常生活を送る人、回復する人も多い。
ただ、三間さんの妹の場合は、一進一退をたどった。もう20年余りになる。障害のある妹の「きょうだい」として、三間さんも同じ年月を過ごした。
「つらい」を抱え込んで
診断後、妹は10代を故郷の東北地方で過ごした。学校に通った時もあったが、精神科病院への入院が長かった。薬で暴力的な言動は抑えられたが、表情はいっそう乏しくなった。
「親よりも、姉妹同士の方がわかり合えることもある。姉の私にできることがあるのではないか」
思い悩む一方で、自分の高校生活もうまくいっていなかった。
学校では生徒どうしの序列「…
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