コロナ拡大1年、見えてきた治療法は

新型コロナウイルス

曽田幹東
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 新型コロナウイルスの感染はこの1年で全国に拡大した。秋田県内でも複数のクラスター(感染者集団)事例が生じ、死者も出る事態となった。予断を許さない現状が続くが、治療に関する知見も蓄積されている。感染症に詳しい由利組合総合病院由利本荘市)医療顧問の朝倉健一医師(66)に、現在の治療法や今後の展望を聞いた。

 ――県内で最初に感染が確認されたのは昨年3月だった。初期の頃に比べて治療戦略は進歩したか

 最初は手探りだったが、現在は「レムデシビル(エボラ出血熱の治療薬)」、「デキサメタゾン(ステロイドの一種)」が新型コロナの治療薬として国内で承認されている。ほかに「ヘパリン(血液を凝固しにくくする薬)」、「フサン(すい炎の治療薬)」、「アビガン(インフルエンザの薬)」などを症状に合わせて使う。ヘパリンやフサンは軽症時からも使用でき、レムデシビル、アビガン、デキサメタゾンは重症化した場合に使う。

 ――各薬の役割は?

 新型コロナウイルスは「ACE2」と呼ばれる細胞表面にある受容体を通じて細胞内に侵入し、増殖する。レムデシビルやアビガンは、ウイルスが細胞内で増殖するのを防ぐ薬だ。

 体内に侵入したウイルスに対し、免疫細胞が過剰に反応し暴走してしまう「サイトカインストーム」という現象が起きることがある。新型コロナではサイトカインストームで肺炎が起き、死に至ることがある。デキサメタゾンはサイトカインストームを抑制する。

 また血管に傷がつきやすくなるため、血が固まって血栓ができ、脳卒中などを引き起こして死に至る場合もある。ヘパリンやフサンは血をさらさらにする効果があり、血栓を防止する。

 ほかにも関節リウマチ薬の「アクテムラ」や抗寄生虫薬の「イベルメクチン」が効くという報告もある。治療法は今後も改善されていくだろう。

 ――米国のトランプ前大統領はレムデシビルやデキサメタゾンなどの投与を受けて快方に向かったと報道された。現在の治療法で重症化は防げるか

 多くの場合は防げるが、患者がもともと何らかの疾患を抱えていると防げないことがある。特にたばこの吸い過ぎなどによる慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)の場合は注意が必要だ。

 ――感染者が多い首都圏では、自宅療養中の軽症患者でも症状が急に悪化し、死亡する事例が数多く報告されている。どのような場合に即刻入院するべきか

 息がはあはあし、食事もできなくなったら、重症化のサインだ。病院でCT検査と採血をし、肺炎や血栓の有無をすぐに調べる必要がある。

 ――患者自らの判断でデキサメタゾンなどを個人輸入してのんではだめか

 それはまずいと思う。ステロイドは免疫機能を抑制するので、軽症のうちにのんでしまうと、細菌性肺炎にかかる可能性がある。いずれにしても、自己判断でのんではかえって危険だ。ただ、自分の肺の状態を把握するため、血中酸素飽和度を測るパルスオキシメーターを自宅に持っておくのは有効だ。

 ――ワクチンの投与が今月以降に段階的に始まる。ワクチンへの期待は

 最新の遺伝子工学を用いた新しいタイプのワクチンで、発症を防ぐ効果は90~95%と言われている。インフルエンザワクチンでも60~70%なので画期的だ。一方、抗体がどれぐらいの期間にわたり体内で維持できるかなど、まだわかっていないこともある。

 新型コロナによる致死率は2%程度と言われているが、治療法が確立してワクチンが行き渡れば、インフルエンザ並み(0・1%以下)に下がるだろう。ただ、多くの国民がワクチンを打ち終わるまでには1年以上かかるのではないか。

 ――ワクチンが普及するまで、できる対策はなにか

 あらためて予防策を徹底することだ。手洗い、消毒、マスク着用を徹底し、密閉、密集、密接の「3密」を避けてほしい。(曽田幹東)

     ◇

 県内の累計感染者数は9日現在、269人。都道府県別で本県より少ないのは鳥取県(207人)だけで、同じ人口あたりの感染者数でみても東京都の約25分の1にとどまる。ただ、新規感染者の増加ペースが昨年末から1月にかけ上昇し、警戒が必要だ。

 県内で感染者が初めて確認されたのは昨年3月6日だった。集団感染が発生したダイヤモンド・プリンセス号の乗船者が県内に戻って発症した。同じ日、北海道から秋田市を訪ねていた女児の感染も判明した。全国で感染拡大の「第1波」が始まろうとしていた。

 全国的な「第2波」がピークになった昨年8月7日には、社会人バスケットボールチームの選手ら14人の感染が判明し、県内初のクラスター(感染者集団)になった。

 冬の「第3波」が広がると、県内では複数のクラスターが生じた。11月に秋田市大町のキャバクラで、12月に秋田中央保健所管内の職場でクラスターが発生。今年1月には市立秋田総合病院横手市立大森病院の入院患者らに感染が広がった。

 昨年11月以降、感染後に重症化し、死亡する人もいた。いずれも65歳以上の高齢者がこれまでに4人亡くなった。

 新規感染者の増加を受け、県は今年1月18日、新型コロナウイルス患者に使える病床数を69床から115床に増やした。さらに感染が広がれば最大で229床にまで増やす計画だ。

 2月9日現在、県内の患者数は34人。全員が入院して治療を受けている。重症者はいない。病床使用率は29・6%で、病床が逼迫(ひっぱく)した首都圏などに比べればまだ低いものの、県保健・疾病対策課の職員は「新規感染者が急増した1月末は、かなり逼迫した地域もある」と指摘し、警戒感を強めている。

 県内の最新の感染者数や病床使用率などは同課のホームページ(https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/51592別ウインドウで開きます)で確認できる。

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