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 伝統工芸品「甲州印伝」の商品を製造・販売する甲府市の「印伝の山本」の芹澤依子さん(37)が、全国伝統的工芸品公募展で最高賞に輝いた。国宝の絵巻をモチーフにした柄が評価され、印伝作品が最高賞を獲得するのも初めての快挙となった。師匠にあたる社長の山本裕輔さん(38)も入賞し、印伝の世界に新風を吹き込んだ。

 芹澤さんは神奈川県出身。大学では国文学を学んだ。輸送機器メーカーを経て、全国の工芸品を紹介する伝統的工芸品産業振興協会(東京)に勤め、鹿革と漆でつくる甲州印伝に出合った。「外国人にも人気があり、可能性や魅力がある」。催事で知り合った山本さんのもとで、2017年から働き始めた。

 最高賞の作品は「鳥獣人物戯画 袋物一式『まう・ねらい・かける・みなも』」。ウサギやサル、カエルの絵で有名な平安・鎌倉時代の絵巻をもとにした柄で、色違いの4種類の袋物を作った。

 原画の繊細な描写を、漆で再現できるようにシンプルにデザインした。着想から完成まで約2年。苦労を重ね、小桜やトンボなどの定番となっている柄とは異なる、新たなイメージをもたらすことに成功した。

 3度目の応募で頂点に立った。印伝の作品としても初の最高賞となり、「信じられなかった。この作品を見て、『欲しい』と言ってくれた人がいたことが、作り手として本当にうれしかった」と振り返る。

 山本さんも「ガッサイ(紫檀木画槽琵琶(したんもくがのそうのびわ)柄)」で若手奨励賞を受賞した。こちらの柄もモチーフは国宝。正倉院の琵琶に描かれた模様を巧みに取り入れた。トートバッグのように使ってもらおうと竹で持ち手をつけ、現代的な商品に仕立てた点も評価された。

 山本さんは父の仕事を見て育ち、大学卒業前から技術を磨いた。皮革の装飾や加工など工程の分業化が進む業界でただ一人、すべての作業を担う伝統工芸士(総合部門)だ。「『作家』と呼ばれる人がいない世界。2人で切磋琢磨(せっさたくま)しながら、作り手の見える、新しい印伝を生み出していきたい」と意気込む。

 2人の作品の注文や問い合わせは、印伝の山本(055・233・1942)へ。(永沼仁)

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