スマホで阪神・淡路大震災の映像を ABC記者が本執筆

白木琢歩
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 【大阪】スマートフォンをかざすと26年前の阪神・淡路大震災当時の取材映像を見ることができる本を、朝日放送テレビ(ABCテレビ、大阪市)の報道記者、木戸崇之(たかゆき)さん(48)が書いた。同社の震災映像アーカイブのガイドブックで、災害の現実を未来に伝えたいとの思いが詰まっている。

 昨年12月に出版された「スマホで見る阪神淡路大震災~災害映像がつむぐ未来への教訓」(西日本出版社)はA5判220ページ。震災が起きた1995年1月17日から3月末までにABCが撮影した映像から357本を選び、詳しい解説を時系列にまとめている。

 ページにあるQRコードをスマホで読み取れば、サイト「激震の記録1995 取材映像アーカイブ」(https://www.asahi.co.jp/hanshin_awaji-1995/別ウインドウで開きます)上の映像を見ることができる。

 木戸さんはABCで長く災害担当記者を務め、アーカイブ化を発案した。

 「発生の瞬間から復興プロセスまでがテレビカメラでつぶさに記録された最初の大災害なんです」。木戸さんはこう説明する。

 阪神大震災当時はカメラ付き携帯電話もなく、2000年代以降の災害のように一般の人が撮った写真や動画は多くない。テレビ局の取材映像は貴重だ。

 社内で長く保管されてきた映像には、救助活動の一部始終や混乱する避難所内など、被災地の「リアル」が多く記録されている。ただ、プライバシー意識が高まった近年は放送を控えてきたものも多かった。

 「日ごろ『震災の記憶が風化する』と警鐘を鳴らす報道をしながら、貴重な映像をテレビ局がこのまま使わなければ、さらに風化を進めてしまう」。木戸さんはこんな危機感から、映像の公開に向けて奔走した。映像に映っていた当時の被災者らを可能な限り訪ね、公開への承諾を得るなど丁寧に準備を重ねた。

 アーカイブは震災25年に合わせて昨年1月に公開された。発生から約7カ月間に撮ったのべ約38時間分の映像を、取材日時や場所で分類してマップ上に展開してあり、クリックすれば無料で見ることができる。

 公開から1カ月で約13万件のアクセスがあり、放送文化基金賞や日本民間放送連盟賞を受賞するなど、大きな反響を呼んだ。

 ただ、映像は2千件もあり、一般の人が全体像をつかむのは容易ではない。

 若い世代の人にはすぐ理解できない場面もある。例えば、焼け跡でしゃがみ込んで小銭を探している夫婦の映像だ。公衆電話で使うためのお金を探していた。当時はまだ携帯電話は普及していなかった。

 将来の世代にこうした「時代背景」も含めて説明しておく必要がある。木戸さんはこう考え、ガイド本の執筆を思い立った。

 「ウェブ空間では膨大な情報に紛れて映像が忘れ去られるかもしれない。紙媒体にしておけば、400年後でも『古文書』のように誰かが見つけ、映像から教訓をくみ取ってくれるのではないか」と木戸さん。「被災者の方が報道陣に託してくださった壮絶な情景や切実な言葉の数々を、次の世代や子孫まで伝えていきたい」

 税込み1650円。

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 アーカイブ映像を木戸さんの案内でたどるオンラインイベント「『見る』『聞く』『学ぶ』バーチャルツアー 26年前の被災地を歩く」が20日午後1時半からある。無料。希望者はアーカイブのサイトから事前登録が必要。(白木琢歩)