路上に薄着のお年寄り 迷い、でも…危ないと手を握った

板倉大地
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 声をかけようか、どうしようか。1月25日午後6時ごろ、外出から帰宅した福岡県苅田町の勢川ふき子さん(46)は、自宅前の路上を力なく歩くお年寄りの女性に気づいた。寒いのに女性は上下とも薄着で何も持っていない。夫に話すと「間に合わなくなるぞ」と言われ、車に乗り込んだ。

 女性はいなかった。3分ほど車を走らせると、さっきの女性が路上に倒れているのを見つけた。唇や手から血が出ている。声をかけると「迷惑をかけられない。1人で行ける」。このままでは危ないと女性の手を握り、近くの皮膚科クリニックの前に誘導した。

 勢川さんの問いかけに女性は名前や行く先を答えた。70代という。それでも「この手を離してはだめだ」と手にばんそうこうを貼りながら、あれこれ話しかけ続けた。お願い、誰かきて……。約5分後、クリニックから仕事を終えた女性3人が出てきた。

 勢川さんは3人に「認知症かもしれません」と目で伝えた。声に出すと女性を傷つけてしまうかもしれない。察した3人が駆け寄ってくれた。

 うち1人が午後6時半ごろ、警察に通報した。30分前に女性の家族から「行方が分からなくなった」と110番通報があったとわかった。間もなく駆けつけた行橋署員が女性を保護した。

 勢川さんは高齢者保護も担う苅田町社会福祉協議会の協力員だ。でも、これまで実際に保護した経験はない。「女性からすれば私は不審者。したことは本当に良かったのだろうか」と悩んでいた。

 2月5日、福岡県警行橋署は勢川さんに感謝状を贈った。北永章夫署長によると、管内では行方がわからなくなった高齢者が死亡して発見されたことが過去にあったという。

 「直感でおかしいと思い、ご主人が後押しする。あうんの呼吸のたまもの。命を助けていただき感謝しています」。北永署長に声をかけられ、勢川さんは「ようやく自分のしたことが間違っていなかったのだとわかり、ホッとした」と笑顔を見せた。(板倉大地)