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 名古屋市が10日発表した新年度の一般会計当初予算案は、総額1兆3194億円(前年度当初比5・2%増)で過去最大となった。新型コロナウイルスへの対応や、障害者福祉の増加に伴う義務的な費用がかさんだ。4月に3期目の任期満了となる河村たかし市長が、自身肝いりの事業に「ほぼ満額回答」(市幹部)で予算を配分したことも総額を押し上げた。

 市財政課によると、歳入、歳出ともにコロナ禍の影響を大きく受けた。352億円の収支不足が見込まれたが、「コロナ対策は待ったなし。やり繰りして財源をかき集め、必要な経費は惜しまなかった」(担当者)。難しい編成作業を経て、何とか対策費を捻出したという。

 歳入の根幹である市税収入は5591億円(同6・5%減)で、388億円の落ち幅は過去最大という。企業業績の悪化で特に法人市民税が落ち込み、161億円減の445億円(同26・5%減)を見込む。

 不足する財源は「借金」で賄う。国の地方交付税の不足分を補うために市が発行する臨時財政対策債を450億円分(同275%増)出すほか、公債償還基金から70億円を借り入れる。これらを使うことで、PCR検査の公費負担(18億円)や健康観察体制の強化(18億円)などコロナ対策費計264億円を用立てた。

 一方の歳出では、福祉や医療などの義務的経費が膨らみ続けている。7546億円(同2・3%増)と歳出全体の6割に迫るが、なかでも障害者自立支援費の増加などに伴う扶助費の伸びに歯止めがかからず、財政を圧迫している。

 一般会計に、特別会計と公営企業会計を合わせた総額は2兆7493億円(同3・9%増)となる。

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 「積極的な予算を編成した。わしはもっと増やさないかんと言っとったが、第一歩といえる予算だと思います」

 河村氏は記者会見で、初めて1兆3千億円を超えた予算案について、満足そうに語った。名付けたキャッチフレーズは「正しい経済学予算」。「税収が減ったときに緊縮財政に転換すると(経済が縮小して)不景気になる」とも述べ、持論の積極財政を進めたことを強調した。

 コロナ対策とともに「力を入れた政策」に挙げるのは、近年こだわりを強める子育て・教育の分野だ。3年目となる「ナゴヤ・スクール・イノベーション事業(画一的な一斉授業からの転換)」には20年度当初より50億円以上多い約61億円を投入した。子ども一人ひとりの関心や特性に応じた教育をめざしてモデル研究を続けるもので、「学校が楽しくなるように全力投球する」と力説した。

 河村氏の肝いり事業は他に、地下鉄「柳橋駅」の新設に向けた検討(1200万円)や、実現が見通せない名古屋城天守木造化の実施設計(特別会計に1億2100万円)など。

 これらは17年4月の前回市長選で河村氏が公約に掲げたが達成できていない。河村氏は「(公約は)130%できている。社会主義と違う。スターリンの5カ年計画みたいにパッとやるものじゃない。しょうがない」と強弁した。

 4月にある市長選への態度を明かさないまま予算を本格編成したことには批判もある。ある市幹部は「環境が整わないと執行できない経費もある。選挙後でも間に合うものまで盛り込むのは非常識だ」。

 予算案は18日開会の2月市議会に提出される。河村氏と対立する自民党などは、8割に無効の疑いがある大村秀章知事へのリコール署名を支援した河村氏の責任を追及する構え。一方で、「早くコロナ対策を進める必要がある」(自民ベテラン)と、予算案には賛成する見通しを示す。(関謙次)

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子育て

●子ども医療費の拡充     111億8763万円

 来年1月から、通院にかかる医療費の助成対象を現行の中学3年までから18歳までに引き上げる

●待機児童対策          27億6976万円

 新たに27カ所の保育所や認定こども園を設置や改築して1346人分の利用枠を確保し、待機児童ゼロの継続をめざす。これとは別に2100万円をかけ、手書きだった利用申し込みを電子申請できるようにする

●ナゴヤわくわくプレゼント事業  9億7876万円

 4月1日以降に子どもが生まれた家庭に、カタログから5万円相当の育児用品やサービスを選んでもらい、子育てのスタートを支援

教育

●なごや子ども応援委員会の拡充  21億2205万円

 市立小学校や特別支援学校の非常勤スクールカウンセラーの勤務を現行の年70時間または年140時間から年280時間に延ばし、子どもが悩みを相談しやすくする。カウンセラーらが使うタブレット端末も配備

●小学校の新たな運動・文化活動  12億4852万円

 教員が携わる部活動に代わる放課後活動の実施校を、市立133校から全262校(新設1校含む)に拡大。人材バンクを設置し、外部指導者の募集や研修を行う

●市立小中学校に和室を設置    1億2170万円

 組み立て式の和室の設置校を17校から67校に拡大。茶道や華道の体験で伝統文化や歴史を学んでもらう

医療・福祉

●敬老パスの利用拡大と回数制限  13億4336万円

 来年2月から、鉄道は名鉄、近鉄、JR東海、バスは名鉄、三重交通の市内運行区間でも敬老パスを使えるようにする。これまで無制限だった利用回数は上限730回に設定

●がん対策の推進           8888万円

 10月から20~39歳の市民を対象に、胃がんの原因になるピロリ菌の無料検査を実施

インフラ

●名古屋駅周辺のまちづくり    12億7300万円

 リニア中央新幹線開業を見据え、乗り換え空間の設計など整備内容の具体化を図る。駅東側のモニュメント「飛翔(ひしょう)」は移設に向けた解体工事に着手

●栄地区のまちづくり       8億1750万円 久屋大通公園南エリアの再整備プランの策定など

観光

●観光誘致の促進           16億5千万円

 市内の宿泊施設を予約した旅行者に宿泊料の2分の1(1泊あたり最大5千円)を助成するなど、国の「Go To トラベル」終了後に市独自で誘致を図る

●名古屋スポーツコミッション(仮称)発足 6千万円

 スポーツ団体や観光業などと連携する組織を設立し、大規模スポーツイベントや合宿などの誘致をめざす

防災

●避難所に通信環境などを整備   1億2650万円

 災害時に指定避難所となる市立小中学校にWiFiのアクセスポイントを整備。区役所や支所には電気自動車などから避難者用電源を充電できる給電器を配備

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