甘くない、ガーナの貧困 大学生はチョコ工場を建てた

[PR]

ガーナチョコレート工場をつくった大学生 田口愛さん(22)

 幼いころ一番の楽しみは、曽祖父の家でもらえる「キラキラの包み紙のチョコレート」だった。

 口に広がる甘さに、幾度となく勇気づけられ、癒やされてきた。「こんなにおいしいものを作っているのはどんな人なんだろう」。3年前、アルバイトでためたお金でアフリカのガーナに渡った。

 そこで見たのは、品質管理が徹底されず、買いたたかれるカカオ農家の貧困だった。薬が買えず、マラリアで命を落とす農家の母親。小石でかさ増しされ、安く売られるカカオ。「大好きなチョコの裏側を何も知らなかった」

 農家のためにできることは? 品質の高いカカオ豆を生産し、高い価格で流通させれば、ガーナも日本も幸せになれるはずだ――。

 東京都内の大学に通うかたわら、インドネシアや台湾の農場を巡って栽培法を学んだ。カカオ豆の値段を決めて買い上げていたガーナ政府とも交渉。アルバイト代やクラウドファンディングで集めた資金で、現地にチョコレート工場を建設し、今年、オリジナルブランド「MA(マ)A(ー)HA(ハ) chocolate」の商品を日本で販売するまでになった。

 1年の半分はガーナで暮らし、地元での信頼も厚い。初めてチョコを口にしたカカオ農家の笑顔が忘れられない。「彼らのほとんどがチョコの味を知らなかったんです」。自分を幸せにしてくれたあの甘さは、作り手の笑顔も守ると信じている。文・写真 中井なつみ