合格でも不合格でも、学びは大きな財産に 誰も奪えない

校長から受験生へ

聞き手・柏木友紀
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 入試シーズンが本格的に始まりました。コロナ禍の中で頑張っている受験生たちへ、校長たちからの言葉をお届けします。

校長から受験生へ:都立白鷗高校・附属中学校の善本久子さん

 今回の大学入学共通テストは入試制度の大きな改革と言われています。制度の変わり目は不安でつい弱気になりがちですが、そういう時こそ強気でチャレンジする人が勝利をつかむと思います。1979年の大学入試に導入された共通1次試験の第1期生だった私の体感です。

 入試に向けて誰もが頑張れるのは、入試が基本的にフェアだから。その日によい答案を書いた人が勝つ。自分が難しいと感じた時は、他人にとっても難しい。だから自分を信じてチャレンジして欲しい。本校の生徒たちには、自宅から変わらぬ環境で受験できる点で恵まれているので、それを力に変えて、とも言っています。

 社会に出て稼いだお金は時に失うこともありますが、学んで身につけたことは誰も奪えません。合格でも不合格でも、学んだことは大きな財産になります。入試はゴールではなく通過点であって、その先どう過ごすのかが大事です。たとえ第1希望でなくても、出会った場所がベストです。

 入試という関門を通過した後は、その集団で他人と比べないことです。ふるいにかけられた集団の中で、相対的な自分の位置を確認することに意味はありません。他人との比較ではなく、自分の中で良い所を伸ばし、足りない所を補う努力をしてほしいと思います。

 そして、誰の点数でもない平均点を気にし過ぎないことです。あなた方は統計上の平均の人生を生きるのではなく、かけがえのない一人ひとりの人生を生きるわけですから。

 私が本校で大事にしていることの一つに、ダイバーシティー(多様性)の尊重があります。多くの子どもは学校で初めて違う価値観の人と出会い、他者と協力して生きることを学ぶ。そこに学校の意味があるのです。

 不確かな情報があふれる不透明な時代だからこそ、「科学と共感」が大事です。危機的状況になると他者への攻撃性が高まり、排他的な感情が育ちやすい。学んで得る科学的知見に基づき、他者にシンパシー(共感)をもって行動できる人になってください。

 コロナ禍の中での受験は本当に大変です。ただ、できない理由を挙げるより、できるようになったことを数えませんか。健康をいかに保つかに目が向き、家族との会話が増え、オンラインでの学習法も打ち立てたのではないでしょうか。ウイルスに関心を持ち、その解決に寄与したいと、進路を決めた生徒もいます。

 人生に無駄はありません。受験を乗り越えて、やりたいことや生きる目的を探しに新天地へ羽ばたいてください。応援しています。(聞き手・柏木友紀)

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〈よしもと・ひさこ〉1960年生まれ。愛媛県松山東高校、東大文学部卒。都立高校教諭、都教育委員会勤務を経て、2016年から現職。グローバル人材育成、ダイバーシティー教育に取り組む。中央教育審議会第9期委員、文化庁文化審議会国語分科会委員。