拡大する写真・図版子どもとオンラインビデオ通話システムで対話する小林由佳さん=2020年12月22日午後5時43分、大阪市、山根久美子撮影

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 コロナ禍で親以外の大人と話す機会が減った子どもたちに、大人と自由に話す時間を作ってあげたい。そんな思いを持った女性たちが、ボランティアで子どもとオンラインで話す取り組みを続けている。「たいわ室」と名付け、利用者が増えている。

 「今日の給食はね、イチゴのババロアだったんだ」「体育のサッカー、シュートが入らなくて。ちょっとずつ練習しようと思う」

 昨年12月の夕方。島根県の小学3年の少女が、オンライン会議システムで大阪市の会社員小林由佳さん(41)と話していた。小林さんは「すごい! そうやって前向きに考えられるのはとっても良いことだよ。自分のこと、たくさんほめてあげてね」と返した。

 小林さんは、NPO法人「トラストコーチング」(東京)で相手の本音を対話で引き出すプログラムを受けた「認定コーチ」だ。保育園児と小学生2人の3児の母でもある。NPOの仲間とたいわ室の活動をボランティアで続けている。

 「たいわ」を終えた少女は「たくさんおしゃべりできて楽しかった。いっぱいほめられて勇気が出た」。少女の母親は、「夕食の準備をしている時などに話しかけられると、つい話半分に聞いてしまうこともある。親以外の安心できる大人と自分の子どもがつながることは、私の安心にもつながります」と話す。

拡大する写真・図版コーチの小林由佳さんと楽しそうに話す少女=2020年12月22日午後5時32分、大阪市、山根久美子撮影

 たいわ室が始まったきっかけは、新型コロナに伴う昨春の一斉休校だった。小林さんのNPO仲間で、京都市在住で、大阪府高槻市で介護施設を経営する森真貴子さん(42)に、知り合いの中学教員が「学校が再開したら遅れた授業を取り戻さないといけない上に、消毒作業や保護者への説明で子どもと対話する時間が減る」「子どもの心が置き去りにされないか不安」と訴えた。

 森さんが仲間に相談し、「私たちが子どもとお話しよう」ということになった。昨年5月、まず女性9人でたいわ室を開設。同7月に更に9人が加わり、現在は女性18人で運営している。18人は主婦や会社員など様々で、みな「認定コーチ」だ。

 利用は無料。親のスマホやタブレット端末を使って親のそばで話す子どももいる。1回約30分で月2回まで。子どもが特定の大人に依存しないよう、別の月は別の大人が担当する。

拡大する写真・図版子どもとオンラインビデオ通話システムで対話する小林由佳さん=2020年12月22日午後5時49分、大阪市、山根久美子撮影

 色々な子どもたちがいる。ずっと自分がゲームをする画面を見せる子。コーチに「お話してて」と言って自分はお絵描きに没頭する子。否定せず、緩やかな時間を過ごすうちに、子どもたちから言葉が漏れ出す。「最近友だちとケンカしてしんどい」「お母さんともっとお話したい」。わだかまりを言語化できると、次の目標も考えられるようになるという。

 開設から今年2月半ばまでに全国の小中学生約200人が利用した。ほとんどがリピーターだ。利用者の増加に伴い、クラウドファンディングで資金を募り、広報費などを賄っている。

 森さんは「再び緊急事態宣言が出て、親にも先生にも心配をかけたくないと思う子どもたちの居場所になりたい」。小林さんは「コロナ禍で『近所のおばちゃん』と話す機会も少ない。距離は離れていても、オンラインで私たちがそんな『近所のおばちゃん』の存在になれたら」と話す。(山根久美子)