図書館の本が真っ青 開放的過ぎた?「本に申し訳ない」

依光隆明
[PR]

 長野県のJR茅野駅に隣接する茅野市民館図書室が最近、ネットで熱い話題となっている。ずらりと並ぶ本の背表紙が退色してしまい、青っぽくなっているのだ。原因は紫外線とみられ、「本の悲鳴が聞こえる」「意匠重視の設計者の自己満足」などなど、ネット上では厳しい意見があふれるが……。市民館側には公共空間としての狙いと高所にあるがゆえの悩み、ジレンマがあった。

 茅野市民館は2005年10月にオープンした。キーワードは「交流」で、外からも見えるし、内からも外が見える。そうすることで異分野の人々の出会いを意識した。

 図書室は最も駅に近い空間に細長く作られている。長辺は両側とも高さ5メートルを超える全面ガラス。蔵書は約1万点で、片側の全面ガラスから茅野駅の列車やホームが見え、片側には八ケ岳の山々が映る。開放感とロケーション、日当たりは申し分ないのだが……。

 ネットの指摘通り、図書室に並ぶ本の多くは背表紙が青く変色している。

 「簡単に言うと色飛びです。日焼けで色が抜け落ちていく現象です」。話すのは茅野市民館ディレクターの辻野隆之さん(65)。辻野さんは国内外の芸術関係施設に関わってきた。

 「美術館が日照を計算するのは当たり前ですが、書籍も同じ。意匠も含めてきちんとしているのが書籍の価値なので、書籍に申し訳ない。なんとかしなきゃいけないと思っています」

 ジレンマという言葉を使いながら悩みを明かす。

 「15年前、オープン型図書室という新しい考え方でスタートしました。だから外に向かって本を見せているのですが、そうすると直射日光の影響を受ける。標高が高いので紫外線が特に強いんです。自然の力に影響を受けています」

 市民館の標高は約800メートルで、標高ゼロの平地よりも1割近く紫外線が強いといわれている。しかも全面ガラスは北東と南西を向いており、特に午後の日差しが強烈に差し込んでくる。対策としてガラスにはUVカットのものを使用、南西面にはロールスクリーンもつけたが、日差しの強さは予想以上だった。

 施設のデザインと図書館機能が相反した象徴的な事例だけに、ネットの反響も大きくなっている。最初のツイートから3日で「いいね」は7万を超え、リツイート(転載)は2万5千に達した。

 辻野さんは「自然の中にある開かれた空間というのが最大の特徴。設計思想をつぶすと持ち味もつぶすので、それは違う」と悩みを明かす。「なんとかしたいという思いは強いのですが……。答えが見つからないのが現状です」(依光隆明)