飲み込んでも大丈夫 歯磨き剤、宇宙進出なるか

末崎毅
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 【神奈川】バイオテクノロジーのベンチャー企業「トライフ」(横浜市中区)が開発した歯磨き剤「オーラルピース」が、宇宙航空研究開発機構(JAXA)によって国際宇宙ステーション(ISS)の搭載候補品に選ばれた。「宇宙仕様」への調整を進め、地球を飛び出すチャンスをうかがう。

 トライフによると、オーラルピースはウメ果実エキスや植物由来の増粘剤など天然原料でできており、乳酸菌由来の抗菌成分が配合されている。化学合成成分は使っておらず、のみ込んでも安全という。歯磨き剤として使えるほか、口の中に塗れば保湿もできる「口腔(こうくう)ケア製品」だ。

 開発のきっかけは、トライフの手島大輔代表の父が末期がんになり、処方された薬剤でおなかをくだしてしまったこと。九州大学などの協力を得て、のみ込んでも安心な製品をつくったが、水が潤沢にない宇宙での生活にも適していると考えた。

 JAXAによると宇宙では水がとても貴重で、歯磨きも「超節水型」が求められる。これまでの歯磨き剤について、JAXAの宇宙飛行士は「のみ込むのは抵抗感が大きく吐き出していた」「はじめはタオルに吐き出していたが、ミント味なのでのんでみたらおいしかった」と語ったといい、宇宙で生活する苦労がしのばれる。

 JAXAが2020年7~9月に宇宙の生活での課題や困りごとを解決できるアイデアを募ると、トライフはオーラルピースで応募。「2022年ごろにISSに搭載予定の生活用品候補」として、大手企業の靴下や洗髪用品などとともに選ばれた。

 実際には搭載されない可能性もあるが、トライフは万全の備えで臨む構えで、オーラルピースを「宇宙仕様」に調整中だ。JAXAは今年5月末(予定)までに企業に開発を完了してもらい、宇宙飛行士によるフィットチェック(使用確認)をした上で、ISSへの搭載の可否を判断する。

 オーラルピースの製造や販売には障害者がたずさわっており、手島さんはISS搭載が実現すれば関係者の自信につながるのでは、と期待する。「私たちの技術や製品が宇宙に行くことで広く普及し、病気の方や障害者に役立つことになればうれしい」。そう手島さんは話している。(末崎毅)

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