春が来る、桜はやっぱり憎らしい 高校生の息子と脳腫瘍

有料会員記事

山下剛
[PR]

 季節外れに暖かかった昨年11月のある日。大森佳枝さん(46)は、勤務先近くの中学校の敷地にある木が、ピンク色の小さな花をつけたのに気がついた。

 「こんな時期に咲く桜なんてあるのかな」。そう思った瞬間、目から涙があふれ出した。

 ピンクの花はやっぱりだめだ。

 あれは2018年の春。佳枝さんは車の後部座席にいた。高校1年の長男伎尋(きひろ)さんに脳腫瘍(しゅよう)が見つかり、手術を受けるために東京・新宿の大学病院へ一緒に向かっていた。息子は佳枝さんの肩にもたれて、ぐったりしていた。

 車がJR山手線のガードをくぐり、新目白通りと明治通りの交差点にさしかかったとき。窓一面にピンク色が広がった。交差点の脇に満開の桜が咲いていた。

 「きれい」。思わず声をあげた。信号が青に変わり、車が動き出すと、ピンク色が後ろに流れていく。息子は顔を動かすことさえできなかった。

 息子の検査や入院などで慌た…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。