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 冬が終わる。昔はたいてい鬱(うつ)気味になっていた暗い季節が、いまは名残惜しい。

 猟師になったからである。

 厳しい冷気の中、鴨(かも)や鹿を追う。響くのは、枯れ葉を踏む自分の足音ばかり。誰にも会わない。独り言が多くなった。感染症になりようもない奥深い山中の爽快は、何物にも代えがたい。猟の魅力の一半は、そこにある。独りになること。世間から、「人の作ったもの」から、離れること。

 さて。さてじゃねえよ((C)山下陽光)。山から里に下りると本なども読むのだが、「存在しない女たち」(キャロライン・クリアド=ペレス著)がたいへん話題になっていた。入学や昇進で女性はなにかと差別される。オーケストラの採用、トイレの設置、コンピューターのプログラミング、除雪の順番まで、いたるところで、男性を基本形として社会を作っている事実を、本書はデータで明らかにする。

 日本でも医学部受験で女子学生が一律に減点されたり、「女性がいる会議は時間かかる」と、自分こそ話の長いおっさんに揶揄(やゆ)されたりする。なぜこんな社会になったのか。「人類の進化は男がもたらした」という謬見(びゅうけん)があるからではないかと、同書は指摘する。「人類が類人猿とは異なる特徴を備えたのは、すべて太古の狩猟者たちのおかげである」という人類学の説がある。そして「男性=狩猟者説」は広く信じられている。つまり「人類の進化は男によってもたらされた」といいたいわけだ。それに対し、男が猟に出ているあいだ、女は出産や育児で協力した、採集でも力を発揮したという反論を、同書は紹介する。

 だが、ここにわたしは引っかかった。

 女性も、狩猟のきわめて大きな…

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