私は誰? 実父宅で見つけた封筒、埋まった人生のピース

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渡辺純子
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 関西にすむ女性(49)が両親と血がつながらないと知らされたのは、9歳の夏休みの朝だった。

 「まりちゃんはうちのほんまの子やない。四国のええ家の子やったんやけど、もらってきたんや」

 母親からそう告げられ、ショックで泣いた。

 母は「このことは絶対だれにも言うたらあかんで」と念を押した。

 それ以上は何も聞けない雰囲気だった。

 商店の一人娘として育った。なぜか心に青い海と緑の山という原風景があった。

 19歳で車の免許を取るとき、住民票の前住所が四国だった。

 「ほんまの親の家かも」

 育ての親に悪い気がして現地に行こうとは思わなかった。真実を知るのもまだ怖かった。

 保育士をしていた27歳のとき、病気で入院した。枕元で父が思い詰めたように告げた。

 「実はまりちゃんは、ええ家の子じゃなくて、乳児院からもらってきたんよ」

 子どもに恵まれなかった両親は後継ぎが欲しくて、四国の乳児院の男の子と縁組する話を進めていた。

 面会に行くと、男の子は外で遊んでばかり。そこに2歳だった女性が近づいてきて、「おとうちゃん」と父のひざに座ったのだという。「それでまりちゃんを養子にしたんよ」

 住民票の四国の住所は乳児院だった。

 「自分は何者なのか」

 怖い気持ちより知りたい気持ちが強まった。

「知らなくてもいいこと、ありますよ」

 退院して乳児院を訪ねた。青…

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