革命は騒々しく、クーデターは静かに アラブの春の記憶

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記者コラム「多事奏論」 論説委員 郷富佐子

 10年前を思い出すと、今でも複雑な気持ちになる。

 2011年のいまごろ、私は中東地域にいた。独裁政権が次々と倒れた「アラブの春」のまっただ中で、当時ジャカルタ特派員だった私にも応援取材の声がかかった。久しぶりの中東出張に、張り切ってまず、カイロへ飛んだ。

 中東には、特別な思い入れがある。9・11米同時多発テロ後のイスラム世界を取材するため、03年初めからヨルダンパレスチナシリアなどを回った。間もなくイラク戦争が始まり、米軍攻撃でフセイン政権が崩壊した直後にバグダッドへ入った。

 初めての中東での日々は、様々な教訓を与えてくれた。特にイラクの状況は厳しく、市民を巻き込む過激派の自爆テロや米軍の誤爆に、怒りと無力感を覚えることも多々あった。それでも、「世界の人々の声を伝える報道に関わっていきたい」という思いは、この時に固まったと思う。

 アラブの春で再訪した中東で強く感じたのは、8年を経て変化した民衆の意識だった。「独裁政権でも転覆しうる」と気づかせたのがイラク戦争だったとすれば、「私たちでも独裁政権を倒せる」と勢いづいたのが「春」だった。民衆パワーの広がりを追うため、ムバラク政権が崩壊したエジプトを離れ、湾岸のアラブ諸国へ向かった。

 11年3月のその日は、朝か…

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