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 首都圏の高校入試で、ここ数年続いてきた受験生の私立大学付属高志向に異変が起きている。志願者が増えた学校がある一方で、早慶などの難関校では減少が目立つ。塾関係者は、コロナ禍や大学入試の行方が不透明なことが関係しているとみる。(柏木友紀、岩本修弥、川口敦子)

3年後の大学入試を不安に思い…

 小学校から大学まで連なる日大藤沢高(神奈川県藤沢市)の広大なキャンパスで10日、一般入試のうち「専願フリー」「併願フリー」の筆記試験があった。コロナ禍で書類選考のみとなった「専願」「併願」を合わせると一般入試の受験者は約1400人で、昨年度より約300人増えた。

 父親(50)と来た平塚市の女子生徒は日大藤沢が第1志望だ。収束の見通しが立たないコロナ禍のもと、3年後に控える大学入試を不安に思い、家族で話し合いを重ね、約半数が日大へ進学できる同校に決めた。父親は「日大は就職にも強いと聞いている。魅力的だ」と話す。

 試験会場に入る長男を見送った会社員男性(52)は、自身も日大出身。長男は昨秋のオープンキャンパスで広大な敷地が気に入り、受験を決めた。野球やサッカー、水泳などの部活が盛んな県内屈指のスポーツ強豪校なので、運動部に入りたいと考えている。

 試験終了後、「数学が難しかった」という大和市立中の男子生徒も「なんとか合格して野球部に入り、内野を守りたい」と語った。

 日大藤沢の入試担当者によると、年々志願者が増えており、第1希望の受験生が多いという。人気の理由を「部活動など生徒の活躍が著しい。大学入試の不透明感がある中、全国的に名前が知られている大学の付属高を選んだというのもあるのでは」とみる。

 日大の付属・系列高では、日大豊山高(東京都文京区)も志願者が昨年度より約200人増えた。日大高(横浜市)も一般入試全体の志願者が約80人増えている。

 ほかに大学付属・系列高で志願者が増えたのは、法政大高(三鷹市、約150人増)、成蹊高(武蔵野市、約50人増)などだった。

難関高のほか、立教や明治も減少

 一方、難関とされる慶応大、早稲田大などの付属・系列高では、志願者数が昨年より減っている。

 慶応義塾高(横浜市)では10日に一般入試が行われた。同校は3日、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に13日に予定していた2次試験の面接を中止すると発表。受験生にとってはこの日が一発勝負となった。

 藤沢市から来た受験生と母親は「この先、県立高の入試もあるので、2次試験がないのは歓迎。コロナに感染するのが怖いから、少しでもリスクは減らしたい」という。12日には慶応湘南藤沢高(藤沢市)の受験も控えていたが、こちらは例年通り面接を行った。

 「もう少し2次試験中止の知らせが早かったら、東京学芸大の付属高も受けられたのに」と話すのは西東京市の男子生徒だ。

 13日は、東京学芸大や筑波大など国立大付属高の一般入試日にあたる。慶応義塾高の2次試験中止が発表された時には、既に国立の出願は締め切られており、できれば併願したかったと願う受験生もいたとみられる。一方で、この男子生徒は「もし慶応に受かれば、大学受験の勉強に振り回されず、やりたいことに力を入れられる。地方経済の活性化について研究したい」という。

 やはり慶応義塾高を受けた都内の男子生徒は、既に立教新座高(埼玉県新座市)に合格していた。早稲田大高等学院(練馬区)も受けるという。大学付属・系列高ばかりを受験するのは「合格すれば大学受験をしなくていいので、スポーツをじっくり長く続けられる」からだ。

 ただ、早慶の付属・系列高は、総じて昨年より志願者数を減らしている。慶応義塾高は182人、慶応志木高(埼玉県志木市)は161人の減少で、慶応女子高(港区)は17人減。早稲田実業高(東京都国分寺市)は185人減で、都や埼玉県の中間発表によると、早稲田大高等学院は約160人減、早稲田大本庄高等学院(埼玉県本庄市)も数百人減らしている。

 このほか、立教新座高や明大中野高(中野区)、中央大杉並高(杉並区)などでも、志願者数が昨年より減った。

塾関係者「早く確実にという安全志向」

 こうした受験生の動向を塾関係者はどうみるのか。

 湘南ゼミナール難関高受験コースの北原剛輔事業部長は「入試改革や私大の入学定員管理の厳格化など、大学入試の不透明感から、近年は特に保護者が付属高を希望する意向が強い。ここ数年は、早慶をはじめ、GMARCH(学習院大、明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)付属・系列の有名校は偏差値が非常に上がり、多くの受験生が中堅付属高を受験する流れができた」と分析する。公立志向が強い神奈川県内では、県立高の受験前に、併願校として受験するパターンが一般的だという。

 コロナ禍による「出願校数の絞り込み」を指摘するのは、早稲田アカデミー高校受験部の川口勇樹主席だ。「従来なら早稲田や慶応の系列を受けられるだけ受験していた層も、今年は県境を越えなければ通えない、遠い学校の受験を諦める傾向がある」。1月の都立高の推薦入試の希望者が近年に比べて急増したことを見ても、「多くの受験生に、早く、それも高望みせずに、確実に合格を手にしたいという安全志向が出ている」と分析する。

 一方、栄光ゼミナールの担当者は、日大付属・系列高が人気を集めている背景について、「日大は獣医学研究科など幅広い学部学科から選択できるうえ、ほかの大学への進学者が多い高校もある。高校受験の時点で将来の方向性を決めなくてもいいという利点は大きい」とみる。

(変わる進学)