四国遍路「結願の町」を案内 おへんろつかさの会 香川

木下広大
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 徳島から始まり、高知、愛媛、香川の八十八の寺院を巡る四国遍路。香川県さぬき市は、巡礼の終着地となる88番札所大窪寺のほか、志度寺、長尾寺の三つの札所がある「結願(けちがん)の町」だ。お遍路文化を多くの人に知ってもらおうと、地域住民ら有志でつくる「おへんろつかさの会」が札所や遍路道の観光案内を続けている。

 遍路文化に詳しい約170人が会員で、2009年から毎年数回、イベントを行ってきた。参加者と一緒に遍路道を歩き、由来や見どころを紹介。仏像を彫ったり、写経をしたりすることもあるという。

 会員は六つの班に分かれ、それぞれ担当の札所や専門の分野を持ち、班ごとにイベントを企画する。会員になるには、年間7回の「養成講座」(市観光協会主催)を受ける必要がある。札所の住職から寺の由来を教わったり、遍路に詳しい大学教授の講義を受けたり、講座の内容は様々。大阪や東京から講座に毎回通う人もいるという。

 遍路の宗教的な作法などを教える「先達」とは別に、観光や文化の面から紹介できる人材を増やすのが目的で、講座を修了した人たちが「せっかく学んだなら一緒に活動を」と集まったのが、つかさの会の始まりだという。

 活動は観光案内だけにとどまらない。16年には、お遍路さんが接待を受けた家に残す「納札(おさめふだ)」5千枚超を集め、願い事や住所を解読。展示会も開いた。

 20年度は新型コロナウイルスの影響でイベントや養成講座が中止になったが、これを機に遍路道の途中にある「おへんろ交流サロン」(さぬき市前山)の展示室をリニューアル。展示品を整理し、スペインの巡礼や弘法大師に関係する掛け軸などを飾った。お遍路さんの休憩スペースとしても使えるようにし、定期的に展示品を入れ替えるという。

 会長の長尾真弘さん(64)は「活動を通して、少しでもさぬき市の文化を知って、ファンになってくれたら。それが地域の力にもなります」と話す。

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 遍路を経験したことがない記者(25)が今月7日、87番札所長尾寺を約2時間かけて、つかさの会の「長尾寺班」の皆さんに案内してもらった。

 鐘がある山門から入り、大クスノキ、本堂、大師堂、東門などの順に回り、それぞれの由来や見どころの説明を受けた。解説は寺に伝わる伝説や、行政の歴史資料などをもとにしているという。

 寺の入り口となる山門にある仁王像の足元には、フジツボをあしらった装飾があった。仁王像が港に運ばれてきた際、顔が怖くて誰も寺まで運べず、長い間海につかっていたという伝承にあやかったらしい。像はその後、歩いて寺に来たという伝説も残っている。

 本堂を経て東門へ。高さ3メートルほどの小ぶりな門は、かつて栗林公園にあったのだと聞いて驚いた。大正初期の公園の改修に伴って移築したのだという。

 案内では、高松藩の藩主・松平家との関係によって寺が宗派を変えたことや、源義経の愛した静御前が寺で髪をそって尼になった伝承などを語ってもらった。

 いずれの話も興味深く、四国八十八カ所霊場を巡り、他の寺の由来や伝説も知りたい気持ちが強くなった。(木下広大)