[PR]

 長野県山ノ内町の湯田中温泉にある老舗旅館「よろづや」の松籟(しょうらい)荘で11日に起きた火災は12日午後4時25分、ようやく鎮火した。中野署によると、煙を吸って病院に運ばれた従業員の30代と40代の男性2人は軽傷とみられ、この日退院したという。同署などは今後、現場検証などで原因を調べる。

 火災は11日午後3時20分ごろに発生。よろづやによると、離れの松籟荘は1939年に完成した地上3階、地下1階の木造の数寄屋造りで、国の登録有形文化財。2階にある厨房(ちゅうぼう)で夕食の準備中に出火したとみられるという。出火当時、旅館に宿泊する予定の約40人は館内におらず、けが人はいなかった。

 一夜明けた12日、関係者は対応に追われた。よろづやは臨時休業し、宿泊客らに別の旅館に移ってもらったりキャンセルに対応したりしていた。男性従業員は「歴史的な、造り直すことも不可能な建物。ショックです」と肩を落とした。近くの別の旅館の経営者は「すぐに焼け落ちてしまった。あっという間の出来事だった」と振り返る。

 「温泉街の象徴とも言える旅館。松籟荘は格調高かった」と話すのは、湯田中温泉旅館組合の宮崎一彦組合長(56)。ここ1年、新型コロナウイルスの感染拡大で加盟する十数の施設の多くが売り上げが半分以上減少。町内の旅行者は昨年40万人程度減ったといい、街並みに欠かせない建物の焼失はさらなる痛手だ。宮崎さんは「県内の感染状況がようやく落ち着いてきて、これからだと思っていたので、残念です」。

 30年ほど前から近くに所有するマンションで滞在中の東京都の市川直美さん(82)は「温泉街にとって大きな損失だが、みんなで何とか盛り上げていければ」と話していた。(遠藤和希)