ソ連兵に内緒で飼った「クロ」 海を走って追いかけ船へ

大久保直樹
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 戦後、シベリア抑留者たちと一緒に旧ソ連から舞鶴港へやってきた犬を知っていますか? 京都府舞鶴市東舞鶴高校の生徒たちが、この実話をもとにした紙芝居の英語版を朗読して、録音しました。国内外に広く知ってもらおうと、来月にもユーチューブで公開します。(大久保直樹)

 第2次大戦後、旧満州中国東北部)などにいた旧日本兵ら多くの日本人が旧ソ連各地に連行され、極東ハバロフスクの強制収容所にも抑留された。

 犬は日本人抑留者たちが飼っていたメス。犬種は不明で、黒い毛が特徴だ。子犬だった時に収容所に住みつき、旧ソ連兵に内緒で飼われていたという。

 深夜の火事を鳴いて知らせたこともあったという。人々は、自分たちの食べ物を分けるなどして可愛がった。ただ、抑留者らが帰国時に日本へ連れていくことは許されなかった。

 1956年12月、シベリアからの最後の引き揚げ船「興安丸」が出港した。残された犬は、凍った海上を走り、船を追いかけてきたという。氷の割れ目で海に落ちたため、船員が縄ばしごを下ろして助け、そのまま舞鶴へ。その後は地元の人に引き取られ、子も産んだという。

 興安丸に乗船した記者が書いた当時の朝日新聞記事は、犬の名前を「クマ」として紹介した。その後、「クロ」という犬の話として絵本や児童書になった。

 東舞鶴高では2016年、美術部と放送メディア部の生徒たちが紙芝居を作り、ナレーションをまじえた映像作品「シベリアからやって来たクロ」を制作していた。

 今回は、国際文理コースの2年生10人が、この紙芝居の英語版「Kuro from Siberia」を舞鶴引揚記念館に提案し、実現させた。昨秋から授業で朗読を練習し、今月9日に市内のスタジオで収録した。同記念館のユーチューブ公式チャンネルで公開予定だ。

 木谷茉奈さん(17)は「伝わりやすいよう意識して朗読した。舞鶴の歴史を多くの人に知ってほしい」。佐藤仁哉君(17)は「英語での感情の込め方が難しかった。争いや差別のない世界になってほしい」と話した。