第1回「黙れ」母は蹴り飛ばされた ゲーム依存症、空っぽの心

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西村悠輔
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 ゲームやスマートフォンにはまって困っている。うちの子は依存症かも――。朝日新聞が昨年10月に開いたオンライン記者サロン「スマホ・SNS・ゲーム……子どもとオンライン、専門家に聞く利用法」には、保護者から多くの声が届いた。中には昼夜逆転、引きこもり不登校、暴言・暴力といった深刻な事例も。新型コロナウイルスによる一斉休校や外出自粛の影響も少なくない。アンケートの声を端緒に、依存当事者や家族、支える人たちをたずねた。

【取材の発端は記者サロン「子どもとオンライン」の声から】 依存症の症状について詳しく知りたい(大分県・60代女性)/ゲーム依存自助グループがほとんどない。もっと立ち上げられないか(兵庫県・40代女性)

 「ゲームのしすぎでおかしくなっていた。家族も壊れて、異常な状態でした。自分でも病的と思いながら、どうしていいかわからなかった」

 京都市に住むフリーターのソウタさん(26)=仮名=がゲームにのめり込んだのは10年前。当時はネット依存という言葉も知られていなかった。

 きっかけは高校2年、カナダへの海外留学だった。現地の高校に通ったが、周囲の会話の速さについていけない。言葉の壁に孤立感が募り、夜はノートPCの中に逃げ込んだ。

 大勢が同時参加できるオンラインゲーム、MMORPGに没頭した。仲間と協力して、大きな敵を倒す。エンディングはない。レベルが上がるたび強くなり、達成感が得られた。学校の友人と音声通話をしながら遊んだが、ゲームの中では「行け」「逃げろ」などと片言の英語でよかった。「現実より居心地が良くなり、やめられなかった。語学もろくに勉強せず、毎晩ゲームばかり。いま思えば逃避でした」

「うるさい」母に暴力、端末を真っ二つに

 帰国後もゲームへの執着は止まらなかった。1年休学扱いで下の学年になり、居場所がないと感じた。学校から帰ると、すぐにPCを開いてしまう。何度か無理やりやめようとも試みた。家の中で本体を隠してもらったり、父の会社に持って行ってもらったり。しかし、次は携帯電話のゲームにはまった。毎月の利用料金が増え、母と口論になった。「うるさく言うなら、こんなもの捨ててやる」。端末を真っ二つに壊した。

 やがて無気力になり、学校も…

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