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経世彩民 西山明宏の目

 「こんにちは。これから実家に帰るんですか?」。12日に迎えた中国の春節の約2週間前。高速鉄道の発着駅、北京南駅の構内でコーヒーを飲んでいると、突然マイクを持った女性が話しかけてきた。後ろにはカメラマンがおり、中国メディアの取材だと気づいた。まさか記者の私が、中国で取材を受けるなんて思いもよらず、戸惑ってしまった。「いえ、実は私は中国人じゃないんです……」。出張のために駅に来ていた私では不適当だろうと思い、断った。

 私が取材されたのには理由がある。当日は春節前後に鉄道や飛行機などが特別態勢を組む「春運」の初日だったからだ。私が取材を受けた様子はインターネット上で生中継され、中国の友人らとの間では「中国に溶け込んできたってことだよ」と笑い話になった。

拡大する写真・図版中国メディアから取材を受ける筆者(右)=インターネット上の動画から

 中国メディアの今年の「春運」取材の内容は、「例年と違って、これだけ実家に帰る人は減っている」という趣旨だった。中国政府はいま、春節に実家に帰らないようにと呼びかけているからだ。

 中国政府が掲げたフレーズは「就地過年(その場で年越し)」。新型コロナウイルスの感染者が出ている地域からの帰省を原則禁止とし、感染リスクが低い場所でも自粛を求めている。国営新華社通信によると、習近平(シーチンピン)国家主席は3~5日に視察に訪れた貴州省で「感染リスクを減らすため、就地過年を呼びかけたい」と訴えた。「地元の年越しに対するサポートにしっかり取り組み、人々が特別な温かい春節を迎えられるようにしなければならない」とも話した。

拡大する写真・図版中国貴州省貴陽市で4日、視察先の住民らと交流する習近平国家主席=新華社

 昨年以降、厳しい移動制限や隔離などで感染拡大を抑え込んだ中国だが、春節前から政府は再び神経質にならざるを得なくなっている。春節は中国人にとって最も大事なイベントで、多くの人が満席の交通機関で実家に帰り、親戚や友人らと大人数で集まって食事をする。それが全国規模で感染を広げてしまいかねないと恐れているからだ。

■複雑な人々…

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