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 新型コロナウイルスに感染し、自宅などで療養中の子どもに対し、一時的に主治医を付ける制度を静岡市が導入している。初回は外来で対面診療し、その後、「臨時主治医」が朝夕2回、保健所に代わって電話で健康状態を聞き取る。感染した子どもや保護者の不安を和らげ、保健所の業務も軽減される、一石二鳥の取り組みだ。

 静岡市保健所と市内の病院小児科が昨年8月、子どもは原則、自宅か宿泊施設で療養すると申し合わせたのがきっかけ。子どもは大半が無症状か軽症で、入院の必要はなかった。一方、病院にかかることができず、病状の悪化や予後に不安を募らせる保護者は多かった。課題解決のため、静岡厚生病院小児科の田中敏博医師(53)が、臨時主治医となり、診療を始めた。

 10~12月に判明した中学生以下の感染者22人中21人が臨時主治医を希望した。初回は外来として対面で受診し、基礎疾患やアレルギーの有無を確認する。全員軽症か無症状で、解熱剤やたんを取る薬を処方したのは9人だった。対面受診後はオンライン診療となり、終了までの期間は6~11日だった。

 このほか、親など18世帯32人の健康観察もオンラインで行った。途中で症状が悪化し、入院に切り替えた例はなかった。

 田中医師は1月以降も、毎日4~7家族のオンライン診療を続けている。1月下旬のある日、外来が始まる前の午前9時に電話をかけたのは10代の子どもとその母親。「せきはどう。ひどくなってはいない?」と話しかけ、体温、脈拍、血中酸素飽和度を聞き取った。「何か心配なことは」とたずねると、母親は「運動させてもいいですか」。田中医師は「基本、元気なんだからした方がいいよ。体操でも、縄跳びでも」。所要時間は1世帯2~3分。午後5時にもう一度、電話を入れる。

 健康状態のほか、「登校再開のタイミングは」「欠席理由を友達になんて言う?」といった相談もあった。保険診療が適用され、かかる費用は再診料のみ。感染者本人は自治体から補塡(ほてん)があり無料で、濃厚接触者の家族は1回数百円程度という。

 開業医らでつくる市医師会も臨時主治医の受託に向け協議中だ。田中医師は「都市部を中心に自宅療養が増える中、医師に気軽に相談できる仕組みは有用だ。この『静岡市方式』が広がってほしい」と話している。(阿久沢悦子)