第22回負けても、立ち止まらない ボクサー「のび太」の必勝法

上山浩也
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 コロナ禍の中、入試に望む受験生たちに、各界の先輩たちからのメッセージをお届けします。

受験する君へ 豊田工業大4年のプロボクサー・テルのび太選手

 ひみつ道具がなくても、果敢に戦う「のび太」がいる。愛知県の豊田工業大4年のプロボクサー「テルのび太」選手=本名・嶋田光高(てるたか)さん(23)。昨年12月の試合でKO勝ちし、通算6勝としてA級ボクサー昇格を決めた。試合前日も卒論を書いていたファイターだ。

 ボクシングを始めたのは大学に入ってから。現在の体重は60キロほどだが、当時は75キロあった。「高2くらいから受験勉強に重点を置いて、浪人もしたので、体をあまり動かしていなかった。しっかりダイエットをしよう」と見つけたのが、世界王者も誕生させている緑ジム(名古屋市緑区)だった。

 静岡県での小学生時代に空手、その後引っ越した熊本市でキックボクシングを習い、格闘技へのなじみはあった。ジムで「やるなら上を」と勧められ、2018年4月にプロデビュー。当初は本名で戦っていたが、しばらくしてリングネームをつけた。提案したのは、昨夏に日本ライトフライ級王者になった矢吹正道選手(本名・佐藤正道さん)だった。

 「興行なので、知名度があってナンボだって。最初は恥ずかしかったけれど、今となっては『のび太』ってみんなが言ってくれる」。眼鏡をかけ、背中に「のび太」と書かれた黄色いシャツ姿でリングに入る。だがゴングが鳴ると力強い。そのギャップがファンをひきつける。「こういうやつもいるんだと思って楽しんでもらえればうれしい」と笑う。

 3兄弟の長男。弟の聖(しょう)さんは筋ジストロフィーで寝たきりの生活を送っている。医療に携わろうと医学部をめざした時期もあった。1浪して東京の有名私立大にも受かったが、国立の医学部には合格できなかった。そこで、昔から好きだった車に携わる道を選んだ。

 A級ボクサー昇格を決めた試合は、矢吹選手が日本王者として迎える初防衛戦の前でもあった。「学生最後の試合になると思っていたし、何より正道さんに勝ってつなげたかった」。結果は最終6ラウンドに相手を倒す、劇的なKO勝ちだった。

 今春、トヨタ自動車に入社する。「医療用の車もあるし、何らかの形で医療にも携われたらと思う。弟にいろんな景色を見せてあげたいという思いもあったし、移動の喜びをいろんな人に提供していきたくて」。ボクシングも続けるつもりだ。

 受験は、高校も第1志望に受からなかった。「もちろん悔しかったし、落ち込みました。でも、長い人生、勝ったり負けたりなので、立ち止まらないことが大事。僕は、最後に進みたい道に就職できた。まだ社会人のスタートラインに立てただけだけれど、先の道を考えて一生懸命やれば、どんな過去も笑い飛ばせると思うんです」(上山浩也)

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私の勝負飯

 いまは試合前日はハンバーグ。おもしろい勝負飯じゃなくてすみません。“飯”じゃないけれど僕はコーラが大好きで、計量後にみんながポカリとか飲んでいるときに1人だけコーラ飲んでます。スカッとするじゃないですか。減量で我慢してトレーニング積んで。水分を抜いているから、体に良くないかもって思うけど……。最初のコーラは、「うんめ~っ!」て知っているので。

連載受験する君へ(全34回)

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