衝突の潜水艦、ソナーの死角に入った貨物船を見落としか

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伊藤嘉孝、贄川俊、西田有里
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 海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」が高知・足摺岬沖で民間の貨物船と衝突した事故で、衝突直前、潜水艦の後方に民間船が近づく位置関係になっていた可能性があることが、関係者への取材でわかった。潜水艦のソナー(水中音波探知機)が自艦後方に位置する船を探知しにくいため、民間船の存在に気づかなかったとの見方が強まっている。第5管区海上保安本部神戸市)は業務上過失往来危険と業務上過失傷害の疑いで捜査を進めている。

 衝突事故が起きたのは8日午前。そうりゅうには約65人が乗艦して訓練中で、潜望鏡やアンテナが海面に出る「潜望鏡深度」まで浮上するところだった。

 関係者によると、民間船側の衝突痕は船首にある突起「バルバスバウ」にあり、潜水艦側は右舷上部の「潜舵(せんだ)」の損傷が激しかった。海面付近まで浮上した潜水艦の右舷側を、後方から民間船が追い越すような位置関係で接触した可能性があり、海保が航跡の確認や双方の乗員からの聞き取りを進めている。

 潜水艦は水中では目視が効かず、周囲の船舶はソナーで確認する。だが、ソナーの受信機は艦首にあり、艦尾方向には探知できない「バッフル」と呼ばれる死角ができるという。艦尾にあるスクリュー音の影響のためで、浮上する前には針路を変えながらバッフルを潰し、全方位が安全な「バッフルクリア」の状態かどうか把握しなければならない。

 こうした手順は「露頂準備」といい、ソナーの要員だけでなく操艦に関わる複数人が連携して担う。関係者によると、そうりゅうは事故当時、定期整備後に、乗組員の練度を回復させるための訓練中だった。全方位の確認の漏れや連携ミスが重なった結果、ソナーの死角である後方からの民間船接近を見落とした可能性があり、海保が捜査を進めているという。ただ当時の潮流や細かい航跡の分析には時間がかかるため、「今後新たな要因が見えてくる可能性も否定はできず、捜査結果が固まってくるのはかなり先になる」(海保関係者)という。

 海保は事故直後、そうりゅうが停泊していた高知港沖に職員を派遣。へこんだ艦橋右側や、折れ曲がった右舷上部の「潜舵」について損傷箇所の計測や写真撮影を行ったという。

 一方、香港船籍の貨物船「オーシャン アルテミス」(5万1208トン)は海保の船体調査が終わり、13日に神戸港を離れた。

 海保によると、船首部には衝突時にできたとみられるへこみがあり、約20センチの亀裂が走っていた。船内側には、この亀裂から海水がにじんでいたという。また、同じく船首部では、黒い塗料が付いた無数の擦過痕を確認。この塗料を採取し、そうりゅうのものとみて海上保安試験研究センター(東京都立川市)で鑑定を進める。

 防衛省は、ソナーや潜望鏡の不具合の可能性については「報告はない」(山村浩・海上幕僚長)としている。

事故後に外部と連絡できず、海自が問題視

 海上自衛隊の潜水艦「そうりゅう」と民間の貨物船との衝突事故。海での事故については、どんな法律が適用されるのか。

 海上衝突予防法は、その名の…

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