100年前の名刺裏に「宴会は1時間」 感染予防の先駆

新型コロナウイルス

北沢祐生
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 スペイン風邪が世界的大流行となった約100年前、須坂の「製糸王」と呼ばれた越寿三郎(こしじゅさぶろう、1864~1932)は、宴席で密や長時間を避けるよう呼びかけていた――。当時、越が取引先などに配ったとみられる本人の名刺が見つかった。関係者は、コロナ禍の現代に先駆けた感染予防の訴えとみている。

 「越壽三郎」とだけ書かれた名刺の裏に、その文言は達筆で記されていた。「簡単なあいさつ文」の意の「舌代(ぜつだい)」とあり、「当分の間、左の通り相守りますので相変わらずお引き立てのほどをお願い申し上げます」と続く。

 そして5項目。「時間を守る」「酒はすべて手酌」「盃(さかずき)のやりとりをしない」「自他とも飲食を強要しない」「宴会は1時間限り」の順で並ぶ。

「意識の高さが」

 郷土の歴史を学ぶ春木町史談会代表の小林謙三さん(87)がこれを解読した。小林さんらは市から委託され、地元にある旧越家住宅の管理に携わっている。名刺は何枚か残っていた中の1枚だが、作成時期も不明で、当初は「酒席で越が心がけていたことかと思った」と小林さん。

 同会で議論する中で、越が実業家として活躍していた頃がスペイン風邪流行時と重なり、文面の「当分の間守る」との表記などから、同会は「3密を避けるために自ら宴会を控えたいと周囲に宣言したものではないか」と推察する。

 小林さんによると、越の元には全国から商談で訪れる人が多く、須坂には料亭も少なくなかった。小林さんは「感染症に対し、自らを律することを知っている越らしい意識の高さが感じられる」と話す。

 スペイン風邪は日本でも猛威を振るい、40万人前後が亡くなったとされる。当時の記録のまとめによると、政府はマスク着用やうがい、室内の換気、患者の隔離など、現在のコロナ禍に通じる対策を呼びかけたという。(北沢祐生)

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