合併16年 旧町の恩恵に濃淡 大分市議選

中沢絢乃
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 2005年に旧佐賀関町、旧野津原町と合併して現在の大分市になって16年。この間、4度の市議選が行われた。「平成の大合併」が旧2町に与えたのは恩恵か、衰退か。合併後のまちづくりに議員が果たした役割は――。

 豊後水道の激しい潮の流れで身も締まった「関あじ・関さば」は、大分を代表するブランド魚だ。刺し身が有名だが、関あじ・関さばをぜいたくに使ったフライが全国放送の民放グルメ番組で取り上げられるなど、加工品も人気だ。

 県漁協佐賀関支店に加盟する漁師によって一本釣りされることなど、関あじ・関さばはルールを定めて品質を保証してきた。今では水揚げの半分以上が東京や福岡など県外の市場で取引される、全国区のブランドとなった。

 旧佐賀関町に合併は恩恵をもたらした。漁協は関あじ・関さばを鮮魚一本で売り出してきたが、合併の翌年からは加工品づくりに取り組んでいる。小さい個体を活用しようとするのが狙いだが、財政規模の大きい大分市に組み込まれて予算が確保されるようになったことが後押しした。

 旧佐賀関町役場で20年以上水産行政に携わり、今も市の林業水産課に勤める職員によると、旧町時代から、漁港の整備や漁業資源を守るための稚魚の放流、魚礁の設置には聖域的に予算が確保されていた。

 だが、財政は年々逼迫(ひっぱく)してきており、「このままでは計画を継続していけない」と危機感を覚えていた。合併により市は町の事業計画をすべて引き継ぎ、従来のハード整備も着実に続けられているという。

 有力な水産ブランドをもっていなかった旧大分市にとってもプラスになった。観光施策はグルメ色を強め、合併の翌年からは「歩くほど美味(おい)しくなる街大分市」をキャッチフレーズにした。

 旧野津原町はどうか。

 「早く大分市民にしてください」。合併直後の2005年2月8日付朝日新聞大分版で紹介されている旧野津原町民の声だ。

 当時の市長に「おでかけ市長室」で訴える旧町民の様子を記事はこう紹介する。「野津原地区は、市内の70歳以上の人が1回100円で路線バスに乗れる『ワンコインバス』の対象外。同じ市民なのに不公平だという訴えに、詰めかけた約200人から拍手が起きた」

 その後、ワンコインバスの対象に加わり、150円になった今も続く。

 高齢化が続く旧野津原町にとって公共交通機関の確保は重要な課題だ。

 だが、昨年9月、市内のバス事業者は野津原地域を走る路線の大部分を廃止・減便。市は代替手段となるコミュニティバスを走らせているが、本数は半分ほどに減った。

 一方で、市は昨年6月、野津原地域と市中心部を結ぶ低速電動バスの実証実験を始めた。時速20キロ未満で走る安全で環境に優しい乗り物とうたうが、日常の買い物や病院への往復に使うには実用性が低い。「ないよりは助かるが、住民の感覚とはズレがある」。旧町の町長だった男性は話す。

 合併直後の05年の市議選では、旧佐賀関町、旧野津原町を選挙区として定数1ずつが与えられ、地域代表を送り出せた。だが、その特例は1期のみ。佐賀関はいまも地域代表を出しているが、野津原は、今は地域が一丸となって推す明確な地域代表を市議会に送り込めていない。元町長は「住民の声が市に届いていない」と話す。(中沢絢乃)