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 静岡県伊東市の菓子店と市民らが甘い絆でつながる「伊東お菓子ぃ共和国」が3月、建国10周年を迎える。会員制の「国民」が増え、パーティーや抽選のイベントを展開し、内政は着々と発展している。ただ、観光客の参加はまだ少なく、「外交」には課題もうかがえる。

 人気の銘菓「みかんの花咲く丘」(石舟庵)や「ネコの舌」(三木洋菓子店)を載せ、寿司(すし)用の皿がぐるぐると回った。伊東市富戸の「海女屋伊豆高原店」は昨年末から正月3日まで、来客から寿司の注文を受けながら、12種類の「回転菓子」を提供した。

 新型コロナウイルスの感染を心配し、回転する寿司を避ける観光客がいる中で、上村昌延社長は「レーンが空いているのは寂しい」とお菓子ぃ共和国に相談。包装された菓子を流した。「4種類くらい買って、席で食べてから自宅に持ち帰る人もいた。一度にいろいろな菓子を選べるのが良かったようです」と共和国と提携する手応えを語った。

 伊東市では戦後の1950年代から行楽期に観光客が押し寄せ、JR伊東駅近辺や伊豆高原などに菓子店が増えた。2011年3月、市内20店などが「甘い絆は世界平和の礎になる」と共和国の建国を宣言。同市の商工会議所が事務局になった。

 会議所の12年の調査では市内の菓子店は139。人口千人当たりの店数は京都、金沢両市より25%以上多く、「伊東は少しお菓子ぃぞ!」と結束を強化した。共和国の現在の加盟店は47。年会費千円で入会した国民の人口は14年の76人から、今年1月には294人にまで増えている。

 国民には加盟店で使える500円の優待券を配るほか、誕生ケーキ券、ギフト券、お正月用切り餅などが抽選で当たる。参加費千円で菓子を食べ放題のパーティーも開いた。

 共和国の初代大統領を続ける青木喜世司(きよし)さん(81)は「菓子の好きな市民がかなり多いと実感した。伊東の菓子職人の多くは東京で修業し、熱心に勉強も続けるから、おいしい菓子がたくさんある」と語る。

 共和国は次世代との交流も企画。市立西小学校では、これまで3回、老舗菓子店「紅谷」の佐々木秀さん(53)が和菓子の作り方を教えた。紅谷を訪れた同小の児童たちは、人気の銘菓「紅花」を「一生に一度は食べたい」とPRするポスターを描いてくれた。

 共和国閣僚の甘光(かんこう)大臣は旅館の若女将で、漁業や教育の関係者も入閣し、多様な業種からの協力が国を支えている。ただ、現在の国民のうち、市外・県外の人は1割程度で、観光地なのに少ない。首都圏への大使の任命など、積極的な外交政策も期待される。

 青木さんは「温泉や魚介類が目的で伊東に来る人たちに、食べてほしい菓子がたくさんある。共和国は10年間で成長した。15年か20年の節目までにもっと花を咲かせたい」と前向きだ。(村野英一)

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