受験生への言葉「可能性は無限に」 渋谷教育学園理事長

校長から受験生へ

聞き手・川口敦子
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 入試シーズンが本格的に始まりました。コロナ禍の中で頑張っている受験生たちへ、校長たちからの言葉をお届けします。

校長から受験生へ:渋谷教育学園理事長・田村哲夫さん

 受験は厳しいですが、突破した先に世界が広がります。私は、さなぎの時代と呼んでいます。チョウになって羽ばたく前には、必ず硬い皮に包まれたさなぎの時期がある。不思議なもので、外から皮を破る手助けをしてもチョウにはなれません。自分で食い破ることが必要なんです。新たに受験に挑む皆さんは、萎縮せず、可能性は無限にあるというつもりで、まずは向かってみましょう。

 意志や意欲を持って行動する能力を「非認知能力」といいます。数値化しにくい能力ですが、これこそが将来的に大切な力です。身についてくるのはティーンエージャーの頃。極端に自分に自信を持ってみたり、反対に必要以上に自信をなくしたりと、繊細な時期です。でも、だからこそ、外からの無数の刺激物に敏感に反応できる時期だと、長年、生徒たちを近くで見てきて感じます。非認知能力を試すのが、本来の試験であると思っています。

 高校までの学校生活と大学での学びでは、何が決定的に違うか分かりますか。高校までは教師が生徒に教える関係ですが、大学では、学生と教授は対等なんです。教授と対等に議論してこそ、深い研究ができる。つまり、教師が子どもに教えるようなパターナリズムな学習は、大学では通用しないんです。

 その入り口である大学入学共通テストが、今年から始まりました。紆余(うよ)曲折がありましたが、方向性としては間違っていない。今はまだ生みの苦しみの時期です。論理的思考力をはかるには、論文を書かせるしかないと私は思っています。

 そのため本校では、高1から高2まで約1年半かけて、「自調自考」の論文を作成してもらいます。担当教員との個別面談などを通じてテーマを決め、掘り下げていく。題材は自由で、最終的に1万字程度にまとめます。自分が将来何をやりたいのか、まだ見定めていない生徒は少なくありません。これを機に、自分の関心がどこにあるのか気付くきっかけになればと願っています。

 世界を舞台に活躍している卒業生の一人に、大切にしている言葉は何か聞いたことがあります。彼は「異文化アジリティー」と答えました。アジリティーには、環境の変化に素早く柔軟に対応する機敏性という意味があります。

 1万円札の肖像画が2024年度、40年ぶりに実業家の渋沢栄一に変わります。彼こそまさに、アジリティーを体現しています。派閥に属さず、変なこだわりに執着しない。自分をしっかり持っているからこそ、しなやかに千変万化できる。時代はそういう人を求めているのではないでしょうか。(聞き手・川口敦子)

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〈たむら・てつお〉1936年、東京都生まれ。麻布中学・高校、東京大学法学部を卒業後、住友銀行を経て、70年から渋谷教育学園理事長を務める。同学園幕張中学・高校と同学園渋谷中学・高校の校長を兼任する。