老舗15代目・女性花火師はトップ審判 東京五輪出場へ

有料会員記事

波戸健一
[PR]

 「かぎや~」「たまや~」のかけ声で知られる花火の鍵屋(東京都江戸川区)。15代目当主の天野安喜子(あきこ)さん(50)は、世界で十指に入る柔道のトップ審判員の顔を持つ。今夏に開催予定の東京オリンピック(五輪)では日本からただ一人、柔道発祥国の審判員の「代表」として畳に上がる。

「世紀の一戦」を裁く

 昨年12月、東京・講道館で開かれた男子66キロ級代表決定戦。東京五輪の出場権をかけた阿部一二三(パーク24)と丸山城志郎(ミキハウス)が対戦した「世紀の一戦」は日本で初めて、直接対決で代表を決めた試合。その主審を任されたのが、天野さんだった。

 新旧世界王者の激闘は、両者が延長で二つの指導を背負う展開になった。勝負を決する三つ目の指導は出しにくい、という心理はあったのか。天野さんはきっぱり否定する。「どちらかが明らかに消極的な柔道をしたら、ドンと(指導を)出そうと思っていました」

 柔道は度重なるルール改正で選手が積極的に攻め合い、短時間で見応えのある試合展開が増えている。だらだら長い試合になると、審判自身にも焦りが出てくるという。しかし、この日、2人の気迫を肌で感じていた天野さんの胸中は違った。「これで私に批判が出るなら受けて立つ。悔いなく戦ってほしいと思っていた」。2人の体力、気力が絶えれば両者を反則負けにして、休憩後に試合を再開させる選択肢もあった。だが、その必要はなかった。

 試合を中継したテレビ局の想定を上回り、放送が途中で打ち切られるほどの激闘に。そして試合開始から24分、阿部が放った大内刈りに迷いなく「技あり」を宣告。丸山も必死に返そうと体を反らせたが、阿部が腰に力を入れて踏ん張った瞬間を見逃さなかった。

 「自画自賛だけど、いい角度にいられたの」と天野さん。両者の組み方や試合の流れを読みながら、立ち位置を修正するのは審判員の技量の一つ。目立たず、選手を引き立てる。25年のキャリアで最長の試合を、冷静に裁いた。

花火師が柔道審判を選んだわけ

 本業の花火師としては、16…

この記事は有料会員記事有料会員記事です。有料会員になると続きをお読みいただけます。