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 山梨県甲斐市で2011年2月、市内の会社員平野隆史さん(当時24)がひき逃げされ、亡くなった事件は27日午前0時で時効を迎える。佐賀県小城市で暮らす両親は、命が奪われた事件に時効があることへの割り切れなさと、犯人逮捕を信じ続ける気持ちの間で揺れている。

 平野さんは小城市出身。長崎県内の大学を卒業後、大手飲料メーカーに就職し、事件当時は山梨県内の工場に勤務していた。

 11年2月25日午前3時50分ごろ、自宅近くの甲斐市志田の国道20号で倒れているのが見つかり、2日後の27日朝に息をひきとった。聞き込み捜査や防犯カメラ映像から、黒っぽい乗用車が容疑車両として浮上。警察は絞り込んだ約4500台を捜査したが、未解決のまま10年の月日がたつ。

 道路交通法違反(ひき逃げ)罪は18年2月25日に時効が成立した。自動車運転過失致死罪は、亡くなってから丸10年となる27日に日付が変わると時効を迎える。

 「隆史への思いが27日午前0時に消えるわけではない」と母るり子さん(67)は苦しい胸の内を明かす。

 るり子さんと父富夫さん(70)は少しでも手がかりがほしいと、有力情報に懸賞金(上限500万円)を設けた。事件発生日には毎年、現場を訪れ、チラシを配り、犯人逮捕につながる情報を求めた。会社の同僚たちも協力してくれた。

 ハンバーグ、麻婆豆腐、鯛飯(たいめし)、ケーキ……。パソコンには料理の写真が数多く残され、甲斐市の自宅には調味料や調理器具がそろっていた。実家で料理をする姿を見たことがない。「自炊をしっかりとしていたんだ」。両親は初めて知る一面に驚き、成長した姿を感じた。

 死を受け入れられず、るり子さんは亡くなってから2年間、納骨することができなかった。

 富夫さんと話し合い、三回忌に納骨した。「少しでもそばに感じたい」と分骨し、遺骨の一部を小さな骨つぼとペンダントに納め、仏壇に置く。ペンダントは事件現場を訪れる際、必ず身につけた。夕食は毎日、隆史さんの分も用意するようになった。

 犯人を見つけられない悔しさ、申し訳なさは募る。生きていれば34歳。同級生は結婚し、親になっていく。「隆史にもこんな人生があったのかな」と想像してしまう。「きっといいお父さんになっていた」と思うからだ。

 時効が存在することに納得できない思いは強い。「死亡ひき逃げ事件は逃げたことで被害者を死なせた。命を奪ったことに変わりはない。殺人罪の時効は廃止されたのに」

 もし時効を迎えても、犯人が名乗り出るのを待ち続ける。「隆史に謝ってほしい」という気持ちはずっと変わらない。

 情報は山梨県警韮崎署(0551・22・0110)へ。(玉木祥子)

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