「真実」を掘り下げる 片岡・森美術館長と現代アート

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千葉恵理子、編集委員・大西若人
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 東京・六本木森美術館の館長に片岡真実さん(56)が就任して、1年が過ぎた。国際美術館会議(CIMAM)の会長も務め、昨秋には「国際芸術祭『あいち2022』」(旧・あいちトリエンナーレ)の芸術監督にも着任。美術界の「顔」となった片岡さんに、美術館や国際展の現在と未来を聞いた。

コロナ禍と美術館

 ――森美術館六本木ヒルズの超高層ビルの最上層にあり、森ビルが運営しています。日本の美術界では珍しいタイプの私立美術館だと思いますが、その使命は何だと思っていますか。

 「やはり、日本にいながら世界の一部であると意識できる場所で、世界から見れば日本の美術界のゲートのひとつでありたいと思います。世界のアート界の地図上に存在が記されていて、従来もやってきましたが、日本の美術界や美術家について問い合わせを受けたり、情報提供をしたり。観客のみなさんも世界の動向を感じ、学ぶことができる。そういうある種の交換の場になれればいいのかな、と」

 「組織同士のネットワークも大切ですが、結局は人のネットワークだと思っています。人の顔が分からないと、なかなか具体的な仕事には結びつかない。いま文化庁のアートプラットフォーム事業にも関わっていますが、国公立の美術館の方たちにも、海外のキュレーターたちと一緒に仕事ができる機会を作ってゆきたいと思っています」

 ――2020年1月の館長就任早々、コロナ禍に見舞われました。森美術館も2月末から5カ月間休館しましたね。

 「なぜこんなときに、とも思いました。私の場合、組織の内部から館長に就任したので、組織や展覧会の作り方など、すべてを見直して、議論のテーブルに載せたいと思っていた矢先でしたので。ただ一方では、美術館の存在意義を再確認する上で絶好の機会にもなりました」

 「昨年は展覧会の会期をずらすことなどで持ちこたえました。他館も同じだと思いますが、ここまでは予定されていたことを何とか進めて持ちこたえられたと思うのですが、今年以降はさらに難しくなるでしょう。展覧会の準備で海外に行くことができないだけでなく、そもそも『ブロックバスター』と呼ばれる大量動員型のビジネスモデルが持続可能なのか、新しいモデルがあるのか。森美術館もそうですが、海外でも観光客がたくさん来ていた美術館ほど、大変な状況にあります」

 「まずは年間の展覧会の数を減らす計画も立てています。1回の投資を長期間活用するというモデルです。ただ本数を減らすなかでも、美術家や切り口の多様性をどう保つか、が課題となりますね」

 「私立でも、大原美術館岡山県倉敷市)やアーティゾン美術館(東京・京橋)のように、素晴らしいコレクションがある館は、所蔵作品を中心にした運営も可能でしょうが、森美術館は収蔵品数が限られているので、その選択肢をとることはできません」

 ――これを機に、コレクションを充実させていこうというお考えはありませんか。

 「元々、若手支援のような形で、アジアや日本の作家の作品を中心に購入してきました。ただ、国公立美術館のように、国や地域の美術の歴史を網羅する必要や責任はないように思います。後発の企業美術館としては、数は少なくてもいいので、質の高いものに限定して集めていくスタイルもあると考えています」

 ――コロナ禍で気づいた、森美術館のウィークポイントはありますか。

 「森美術館の場合、直接的な…

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