田中章博
何事もなく早く帰って来られますように――。出かける人にかける大阪や京都のことば。じんわり思いが伝わります。
久々の大阪暮らしを始めた数年前のある朝、出かけようとした記者は、妻にこう送り出された。
「おはようおかえり」
え、何それ? 職業柄、訪ねた先で「早く帰れ」と追い払われた苦い記憶がよみがえった。それを上品に言い回した感じ? そんなわけはない。「おはよう」と「おかえり」をくっつけたようなこのことば。大阪育ちでも、九州出身の両親に育てられた記者にはなじみがなかった。
辞典や本をひもといた。「おはようおかえり」は「行ってらっしゃい」「行って来ます」のやりとりに続き、もうひと言添えて出かける人を送り出す大阪・船場や京都のことばなのだという。「仕事が無事に終わって、早く帰れますように」。船場の商家では商談にのぞむ旦那や用事ででっちが出かける際、そんな願いを込めたそうだ。
後半では、長くこのことばを使ってきた人の思いや、言語学者の視点を取り上げます。漫画家のグレゴリ青山さんは、聞かなくなった京ことばをイラストで紹介します。
由来を知り、何だかうれしさが…
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