カードで導く、地域に合った防災訓練 芸工大生が制作

西田理人
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 【山形】地域に合った防災訓練について、住民らがカードゲーム形式で話し合えるツールを、東北芸術工科大学山形市)の学生が卒業研究で制作した。被災時の教訓を日々の訓練にどう生かすか――。3年前に2度の浸水被害に見舞われた戸沢村の蔵岡地区に通い、住民と一緒に考えながら作った。

 ツールは「防災訓練カスタマイズ」。カードを並べながら地域に必要な防災訓練をみんなで考える。中身は「避難経路」「安否確認」など訓練項目を記した「防災訓練カード」7枚、各地の防災対策の取り組みを紹介する「事例カード」14枚、話し合った内容をまとめるシートなど。

 訓練後、参加者それぞれが「振り返りカード」に課題を記入。グループワークで、それらをテーマごとに分類し、改善点を話し合う。その後、「防災訓練カード」や「事例カード」も参考に、改善点を踏まえた次回の訓練計画を立て、課題解決をめざす。

 制作したのは、コミュニティデザイン学科4年の手嶋穂(みのり)さん(22)。静岡県出身で「地元では南海トラフ地震に備えた訓練も多く、災害への危機感が常に身近にあった」という。芸工大に進学後、東日本大震災の話を聞く機会も多く、「災害経験をどう生かすか」を卒業研究のテーマにした。

 研究のフィールドに選んだのは、2018年8月に2度の浸水被害に遭った戸沢村の蔵岡地区。住民や村職員に聞くと、当時、複数の住民が逃げ遅れ、避難した世帯の把握にも時間がかかったことが分かった。

 ただ、地区内では数年ごとに浸水被害が起きている。過去の被災経験が生かせないのは、効果的な防災訓練ができていないからでは――。そう考えた手嶋さんは、地区の民生委員が漏らした「防災訓練をもっと地域に合ったものにできれば……」との言葉もヒントに、ツールを考案した。

 制作にあたって、文献調査や専門家への取材を重ねつつ、使う人の視点を採り入れようと蔵岡地区の住民と話し合いを重ねた。「事例カード」は、「ほかの地域の取り組みも参考にしたい」との住民の声を受け、盛り込んだものだ。

 昨年10月には、蔵岡地区の住民に、実際にツールを使ってグループワークをしてもらった。「災害弱者への避難支援」が課題に挙がり、次回の訓練で避難経路を確認することに。また、「事例カード」を参考に、静岡県富士宮市などで実践されている、玄関先にハンカチを掲げて無事を知らせる「黄色いハンカチ作戦」にも取り組むことにした。地区では、今月21日にもツールを使ったグループワークが開かれる予定だ。

 手嶋さんは、ほかの地域でも活用してもらおうと、ツールをインターネットで無料公開(https://tejikenpi0617.wixsite.com/bousai別ウインドウで開きます)し、ガイドブックや解説動画も作った。取り組みが評価され、研究は学科の最優秀賞に選ばれた。

 手嶋さんは「山形は災害が少ないと言うけれど、決してそんなことはない。ツールを使うことで、防災訓練のマンネリ化を防ぎ、地域ごとに必要な対策を考え続けるきっかけになれば」と話す。(西田理人)