入管法改正案を閣議決定 難民申請中の送還停止2回まで

伊藤和也
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 強制退去処分を受けた外国人の施設収容が長期化している問題を受け、出入国管理法の見直しを進めている政府は19日、改正案を閣議決定した。難民認定申請中は何度でも送還が停止される規定の適用を2回までに制限し、一定の条件のもと施設外での生活を認める「監理措置」を新設する。早期の退去を促すとともに収容の短期化を図り、問題の解消を目指す。

 改正案は、法相の私的懇談会「出入国管理政策懇談会」の専門部会が昨年6月にまとめた提言をもとに、出入国在留管理庁が作成した。

 それによると、難民認定を申請すると回数や理由を問わず一律に送還されなくなる規定に例外を設け、3回目以降の申請で新たな相当の理由がない場合などは適用しないとした。また、速やかな退去に応じれば再入国の拒否期間を5年から1年に短縮する。機内で暴れて送還を妨害したなどケースを限定して退去などを命令できるようにし、命令違反には1年以下の懲役か20万円以下の罰金、またはその両方を科す罰則も設ける。

 こうした退去促進策に加え、監理措置として逃亡の恐れなどが低い人を対象に、親族や支援団体、弁護士など「監理人」の監督のもとで生活できるようにする。収容が初期段階のうちは就労も認める。最高300万円の保証金の納付が必要で、対象者の生活状況などの報告を監理人に義務づけ、逃亡に対する罰則は1年以下の懲役か20万円以下の罰金、またはその両方を科すとした。これに伴い、健康上の理由などから一時的に収容を解く「仮放免」も見直す。逃亡に同じ罰則を整備し、保証金は廃止する。

 一方で改正案には、保護を求めて来日する人をより適正に受け入れるための方策も盛り込まれた。

 母国が紛争中の人などを想定し、難民認定には至らないものの「補完的保護対象者」として難民と同じ「定住者」の資格で在留を認める枠組みを新たにつくる。さらに「在留特別許可」について、強制退去か難民認定の手続き中に法相の職権で判断されている現行法の仕組みを改める。判断の過程や理由が不透明との批判があることから申請制にし、判断の際に考慮される事情を明確化する取り組みも進める。

 これに対し、野党は共同で対案を参院に提出。収容は逃亡の恐れがある場合に限り裁判官の出す令状に基づいて行い、6カ月を上限とするなどの内容が盛り込まれている。(伊藤和也)

 入管問題に詳しい国士舘大学の鈴木江理子教授の話 

 日本の入管収容は司法が関与せず、収容期間に上限がないことから、幾度も国連委員会から勧告を受けてきた。20年8月にも同様の指摘があったが、改定案は応えていない。

 収容代替措置として設けるという「監理措置」は原則、退去強制令書発付前の外国人を対象としており、判断も入管に委ねられたままだ。長期収容という現状の解決を目指した法案とは言い難い。監理人に、措置対象の外国人の生活状況などの届け出義務が課されており、管理・監視に市民を動員しようとしている。

 新設される在留特別許可の申請手続きも、すでに退令が発付されている人には適用されない。「収容・送還に関する専門部会」が提言の中で、退令発付後に在留を許可すべき事情が生じた場合、処分の変更を含めて対応することとした内容にも応えていない。

 シリア難民やロヒンギャのように諸外国では難民認定されている申請者をほとんど保護できていない現状で、原則、3回目以降の申請者が送還の対象になる恐れがある点も問題だ。送還された申請者が本国で投獄や死刑となる恐れもあり、取り返しのつかない結果をもたらしかねない。

移民政策に詳しい近藤敦教授(名城大学)の話 

 難民に準じる身分の導入を設けたことは一定の評価ができるが、国際水準に近い運用が望まれる。施設外での生活を認める監理措置が導入されたのも望ましいが、現在の仮放免制度を改め、就労を認めるか、生活支援策を採り入れなければ生活が成り立たない状態は変わらない。刑事罰も盛り込まれたが、母国の事情で帰国できない人もいるため、問題解決になるとは思わない。在留特別許可を積極的に活用し、日本人の家族がいる場合などは柔軟に認めることも長期収容の解決策になる。改正案にはないが、他国では在留資格がない人でも働くことができ、犯罪歴がないといった長期滞在者には在留を認めている。人手不足にある労働環境を踏まえれば、日本社会にとってもプラスになると思われる。